《新刊紹介》イチ押しは『福田村事件』

               大阪唯物論研究会会員 倉島伝治 

 今回は、以下の4つの作品を紹介します。イチ押しは、1番の『福田村事件』です。前回『鶴彬』を紹介しましたが、「初見」との声があったので、佐高信(さたかまこと)の参考文献に未収録の文献から幾つかを紹介します。

1.『福田村事件』
  辻野弥生 著  五月書房新社  2023年7月10日 発行
  270頁  ¥2,200円
  関東大震災時に、朝鮮人に間違われて虐殺された被差別部落民の事件を、
 掘り起こした書。2013年刊行後絶版になっていたが、今回増補改訂版と
 して復刊。朝日新聞6月20日号夕刊で紹介された。

2.『やさしい猫』
  中島京子 著  
  中央公論新社  2021年8月25日 発行
  414頁  ¥2,090円
  ちょっと古いが、オーバーステイと「入管」問題を告発する小説。
 6月24日(土曜日)からNHKで連続テレビドラマとして放映中。

3.『スーパーマンは来ない』
  エリン・プロコビッチ 著  旦 祐介 訳
  緑風出版  2023年3月10日 発行
  418頁  ¥3,520円
  米国における水汚染の実態とそれに対する闘いの紹介。
 「スーパーマンは来ない」は自らの手で勝ち取る以外には
 解決しないとのアピール。軍事基地とPFASの告発も含まれている。

4.『ヒトは軍用AIを使いこなせるか』
  ジェームズ・ジョンソン 著  川村幸城 訳
  並木書房  2023年6月10日 発行
  362頁  ¥2,420円
  核大国間の戦略的安定性に対する軍用AIの影響を考察し、
 「核の不安定化時代の再来」と結論付けている。

 

『鶴彬』関連の参考文献・未収録文献

 鶴彬は全日本無産者芸術連盟(ナップ:〔エスペラント語〕Nippona Artista Proleta Federacion)で活動したにもかかわらず、「中野重治全集」の索引で見る限り全く登場しません。また、1955年版の「日本プロレタリア文学大系(全9巻)」にも痕跡すらありません。鶴彬は、「反戦川柳人」にとどまらず「プロレタリア川柳人」として評価されなければなりません。

1.『詩人の生と死について』
  江森盛彌 著
  新読書社  1959年 発刊

2.『近代の漂泊』
  秋山清 著
  現代思潮社  1970年 発刊

3.『鶴彬研究(1~21)』
  鶴彬研究会  1978~1985年 発刊

4.『日本社会運動人名辞典』
  塩田庄兵衛 編
  青木書店  1979年 発刊

5.『鶴彬の軌跡』
  岡田一と 著
  文藝集団  1981年 発刊

6.『日本プロレタリア文学集・第40巻』
  岡田一と 著
  新日本出版社  1988年 発刊

7.『反戦川柳作家 鶴彬』
  深井一郎 著
  日本機関紙出版センター  1998年 発刊

8.『道頓堀の雨に別れて以来なり』
  田辺聖子 著
  中央公論新社  1998年 発刊

9.反戦を貫いた鶴彬
  音谷健郎 記
  朝日新聞  2003年7月4日・朝刊

10.『鶴彬の川柳と叫び』
  尾藤一泉 著
  新書館ブックス  2009年 発刊

11.映画『鶴彬 こころの軌跡』
  神山征二郎 監督  2009年
  シナリオは「シネフロント別冊37号」

12.小説『鶴彬』
  吉橋通夫 著
  新日本出版社  2009年

13.『反戦川柳 17文字に込めた危機感』
  中村尚徳 記
  朝日新聞  2016年6月13日・朝刊