《研究資料》ハマースとパレスチナを知るために

 

編者:阪唯物論研究会会員 兵庫正雄・川下 了

 

 

【Ⅰ】前書き
 昨年10月7日、パレスチナのガザ地区に拠点を置くイスラーム抵抗運動(通称ハマース〔Hamas〕)を中心とする政治諸組織(パレスチナ解放人民戦線〔PFLP〕、パレスチナ解放民主戦線〔DFLP〕、パレスチナ・イスラム聖戦〔PIJ〕、など)の軍事部門が、厳重なガザ隔離壁を突破してイスラエル占領地に対する攻撃をしかけました。この「アル・アクサ洪水作戦」と名付けられた反占領闘争は、第2次世界大戦後ほぼ80年近くに及ぶイスラエルの植民地支配に対するパレスチナ人民の「洪水のような」迸(ホトバシ)る怒りの爆発でした。

 これに対してイスラエルは、陸・海・空から一斉にガザ地区に侵攻し、軍事部門と民間部門を区別することなく、一般市民の住宅はもちろん、病院や学校を始めとする公共施設をことごとく破壊する焦土作戦を展開し、半年後の今日に至っています。この「鉄の剣作戦」と名付けられたイスラエルの軍事行動は、文字通りパレスチナ人民に対する大量殺戮行為(ジェノサイド)であり、3月末現在で既に3万3千人を超えるパレスチナ人民が殺され(行方不明者は含まず)、7万6千人以上が傷付いています。

 一刻も早い停戦とパレスチナの独立(占領の終結)をもたらすための永続的停戦への移行が求められています。そのために、私たちは出来る限りのことをしなければならないし、世界世論はイスラエルとそれを支援する諸国の政府に対する圧力を強めなければなりません。

 「世論など何の力にもならない!」「結局は強い者が勝つ!」といった俗論が未だに一定の影響力を持っていますが、これには支配者側の世論誘導が大きく影響しています。現代社会においては、世論を無視して政治を行える国はそう多くはありません。実際、イスラエルのジェノサイドに対する抗議の声が欧米で高まるにつれて、欧州諸国政府のイスラエル支持のトーンはダウンし、米国政府ですら3月25日の「ガザ停戦国連安保理決議」に拒否権を行使できませんでした。日本政府も、一時停止していた国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への拠出金を再開しました。

 現代世界では、世論操作が極めて重要な政治活動の一部門になっています。その際、勤労人民が正しい情報を受取って正しい判断をすることを阻むための諸手段が様々に開発されています。国家間の争いにおいても、自国の世論を政府支持に、他国の世論を反政府的に誘導するための情報戦が熾烈に展開されています。パレスチナ問題で日本や欧米諸国の支配階級が用いている方法の一つは、イスラエルの蛮行をなるべく穏便な行動に、あるいはやむを得ないものとして報道する一方で、パレスチナ側の行動は極めて非人道的であるかのように報道することです。また中立的立場を装って、イスラエルもパレスチナも「どちらもどっち」だと報道し、「パレスチナ問題は難しい。」と思い込ませて、勤労人民に判断を放棄させる方法も盛んに用いられています。

 最初の方法の典型的な例は、ハマースに「イスラーム過激派」というレッテルを貼付け、テロリスト集団に仕立て上げる手口です。ハマースは、選挙によってパレスチナ議会での多数を獲得し、ガザ地区での行政権を掌握しているパレスチナの政党であり、決して「テロリスト」集団ではありません。ハマースだけではありません。イスラエルの占領政策に抵抗する者はすべて「テロリスト」のレッテルを貼られて殺害されたり逮捕されたりしています。政府の見解表明や多くのマスメディアの報道は、10月7日の「アル・アクサ洪水作戦」でパレスチナ側がイスラエルの入植者(占領者)約240人を人質にしたとして激しく非難する一方で、イスラエルが8千人を超えるパレスチナ人民を拉致して監獄に収容(人質に)していることには言及しません。

 イスラエルがシリアにあるイラン総領事館を爆撃してイランの武官ら16名を殺害したことは黙認する一方で、イランが報復攻撃をするや否や声高に非難します。一部のマスメディアは、「イラン総領事館」と書かずに「イランの建物」と表記する気遣いすら示しました。

 第2の方法の典型的な例は、事態を相対化する手口です。「パレスチナ問題は、ユダヤ教とイスラーム教という宗教対立という根深い問題が絡んでいて解決が容易でない。」とか、「憎しみの連鎖を断ち切るのは難しい。」といった情報を浸透させます。そして人々に「パレスチナ問題は難しい。」と思い込ませて世論を無関心に誘導するのです。

 しかしパレスチナ問題の核心は、宗教問題でも「憎しみの連鎖」でもありません。パレスチナ人民が歴史的に代々暮らしてきたパレスチナの地に、第2次世界大戦後に米英の支援を受けたユダヤ人たちが本格的に占領・入植を開始し、4次の戦争を通して次々にパレスチナ人民の土地を強奪して占領地を拡大してきたことに対して、パレスチナ人民が占領・植民地政策を終わらせ、土地と独立を回復するために闘っているのです。これがパレスチナ問題の核心であり本質です。

 イスラエルを支援する帝国主義諸国の支配層とその傘下にあるマスメディアは、この占領・植民地問題に言及することを徹底して回避しています。だからパレスチナに関する報道は、常にパレスチナの抵抗運動の爆発であった「アル・アクサ洪水作戦」から始まるのです。それに先立つ80年間の占領・植民地政策は意図的に覆い隠されているのです。

 今、イスラエルのジェノサイドを批判して、ジェノサイドを即刻止めることを求める運動は、大きく2つの部分から成立っています。1つは「アル・アクサ洪水作戦」をパレスチナ人民の反占領・独立闘争として支持する立場に立つ人々、もう一つは「アル・アクサ洪水作戦」は支持できないが、イスラエルの「報復」攻撃はジェノサイドであり容認できないとする立場に立つ人々です。

 現段階では、この2つのグループは手を繋いでジェノサイドを一刻も早く止めさせる闘いを盛り上げなければなりません。但しそれが実現した後には、「パレスチナ問題を根本的に解決するためにはどうするべきか?」という問題が生じます。そこでは、「オスロ合意」なるものの評価が問題となります。「アル・アクサ洪水作戦」は、「オスロ合意」の拒絶宣言でもあったのです。従って、「アル・アクサ洪水作戦」は支持できないが、イスラエルのジェノサイドには反対するという立場では、パレスチナ問題の解決にまでは至らないことになります。繰り返しますが、「パレスチナ人民の土地を強奪し、パレスチナ人民を追放して占領地を拡大してきたイスラエルの占領・植民地政策がパレスチナ問題の核心であり本質である」のだから、この本質的問題の解決なしには、パレスチナ人民は地獄の苦しみから解放されないし、パレスチナの地に安定的平和は訪れません。このことの認識を広めることが、前進のための必須要件となっています。

 そのためには、「アル・アクサ洪水作戦を主導したハマースとは何か?」、「彼らは何を求めているのか?」ということを広く知らせることが必要です。まずはハマース自身が語る「10月7日の攻撃『アル・アクサ洪水作戦』についてのハマースの声明」をできるだけ多くの人に読んでもらいましょう。続いて、「ハマース憲章(2017)」を読んでもらいましょう。そうすれば、ハマースが「テロリスト集団」でも「イスラーム過激派」でもないことを理解してもらうのを大いに助けることになるでしょう。また、「アル・アクサ洪水作戦」の目的と実際、そしてその正当性を理解してもらうのを容易にしてくれるでしょう。そしてそのことは、多くの人々にパレスチナについての正しい情報に接し、正しい判断をしてもらう大きなきっかけとなるに違いありません。

 この2つの文書の日本語訳は未だ広く出回っていないばかりか、その入手が必ずしも容易でないため、自らの能力不足は重々承知の上で2つの文書の英語版からの訳出を試み、資料集として作成しまた。そして、それに「ギリシャ共産党(KKE)のハマース及びパレスチナ問題に関する見解」の一文を付け加えました。この文書の日本語訳は、新聞「思想運動」(2024年1月1日号)に掲載されていますが、改めて訳出したものを掲載します。

 このKKEの一文を付け加えたのは、「共産主義者の民族解放運動に対する態度」について論じた文書だからです。このKKEの文書について、一部で、「KKEはハマースとパレスチナ人民を意図的区別して対立させている」とか、「KKEは米帝を戦略敵とすることに反対している」といった疑問が投げ掛けられていますが、それは誤解に基づくものではないかと思われます。KKEのこの文書は、民族・植民地問題としてのパレスチナ問題をどう理解するべきか、という理論的問題を扱った文書です。

 百年という長い歴史的期間を挟んでいるとはいえ、コミンテルン第2回大会の「民族・植民地問題についてのテーゼ(命題)」とこの問題を扱った小委員会のレーニンの発言及びM.N.ロイによるテーゼの補足説明は、共産主義者にとってその思考の基礎におかれるべき諸原則を示しています。その諸原則の主要なものを挙げるとすれば、以下のようになります。
①  先進資本主義諸国の労働者階級は、植民地の被抑圧民族の解放のために闘うことなしに自己を解放することはできない。
②  民族独立運動をブルジョア民主主義運動として把握するのではなく、民族解放闘争として把握すること。
③  民族解放闘争を支援する際、当該する植民地の経済発展段階を具体的に把握すること、それによって民族解放闘争における民族ブルジョアジーの役割を規定すること。
④  共産主義者インターナショナルは、植民地や後進国の革命運動と一時的に提携し、また同盟をさえ結ばなければならないが、しかしそれと融合してはならない。

 KKEの文書は、これらの諸原則をパレスチナ問題に適用しようとしたものです。即ち、共産主義者はパレスチナの民族解放運動に対して如何なる態度を取るべきかという問題を立て、それに対する自己の見解を率直に述べたものです。KKEの文書が、上記のコミンテルン第2回大会のテーゼが示した諸原則をどの程度正しく適用出来たか、また出来なかったかは、読者諸氏がKKE文書を読んで判断して頂くことにします。ただ編集者たちが言えることは、ハマースは、その「2017年憲章」の第1章で、「『ハマース』はパレスチナ人のイスラーム民族解放・抵抗運動である。その基準の枠組みはイスラーム教であり、イスラーム教がその原理、目的、手段を決定する」と自らを規定しています。従って、共産主義者はハマースと一体化することは出来ず、またすべきではなく、パレスチナ人民を独自に組織する義務があります。そしてKKEがパレスチナの共産主義者との連帯に最大の関心を置き、共産主義者を受け入れているパレスチナ解放人民戦線(PFLP)との関係を密にしていること、その上でパレスチナ人民の多数の支持を得ているハマースの闘争を支持すると表明していることは、正しいと考えていることを記しておきます。

 最後に、読者諸氏がこの資料を熟読頂き、パレスチナ問題についての認識を深め、パレスチナ人民の解放運動を支援する運動の一助に是非して頂きたいという希望を述べて、資料の前書きを終えたいと思います。なお、別紙の岩本勲氏の論考「パレスチナ問題、誰が国際法を犯し続けたのか」を併せてお読み下さるようご案内申し上げます。(2024.4.20)

 表紙を飾っている写真のハマ-スの武装組織の名称は、1930年代にパレスチナにおけるジハード闘争の支柱となった宗教家イッズディーン・アル=カッサームにちなんだものです。

【Ⅱ】10月7日の攻撃「アル・アクサ洪水作戦」についてのハマースの声明(仮訳)
 この文書は、Webサイト「Socialostaction(英文)」から兵庫が訳しました。


[Socialistactionの編集者注:以下の声明は、イスラーム抵抗運動ハマースが数日前に発表したもので、シオニスト、植民地入植者、イスラエルなるもの*1に対する10月7日の攻撃(アル・アクサ洪水作戦)に対するハマースの政策と説明を公式に提示した最初の声明である。この声明は、イスラエル、アメリカ、そして世界の商業メディアが、ハマースを、無辜(ムコ)のイスラエル市民に恐ろしい残虐行為を加えることを狙った狂気的で血に飢えたテロ組織として特徴づけていることに、非常に詳細に反論している。

 ハマースは、100年以上に渡るイギリスとシオニストによるパレスチナ人民の歴史的な故郷からの追放とその後の民族解放闘争 —— それは、全世界の反帝反植民地主義の闘いと類似している —— の歴史を伝えている。ハマースはまた、10月7日に捕らえたイスラエル人を、現在シオニスト政権によって残酷に投獄され、殴打され、拷問されている8,000人余りのパレスチナ人囚人と交換するという彼らの目的を述べている。自由と解放を求めるパレスチナ人民の闘いに連帯するいくつかの記事については、socialistaction.org を参照して頂きたい。ジェフ・マックラー]

 

アル・アクサ洪水作戦 ハマース報道部
我々の説明文 ——— アル・アクサ洪水作戦

 最も気高く最も慈悲深きアッラーの御名において、我が揺るぎなきパレスチナ人民、アラブ・イスラーム諸国に幸あれ。全世界の解放された諸国人民に、自由と正義と人間の尊厳を擁護する諸国人民に幸あれ。

 ガザ地区とヨルダン川西岸地区に対するイスラエルの侵略が続いていることを踏まえて、そして我が人民が独立、尊厳、史上最長の占領から脱却するための戦い —— 彼らはその闘いを通して、イスラエルの殺人マシーンと侵略に立ち向かう最高の勇気と英雄的行為を示してきた —— を続けていることを踏まえて、10月7日に起こったことの実際を、その背後にある動機を、パレスチナの大義に関連する全般的背景を、そしてまたイスラエルの主張に対する反論を、事実を大局的に見るためにも、我が人民と世界の自由な諸国人民に対して明らかにしたい。
 第一に、何故アル・アクサ洪水作戦なのか?
 第二に、アル・アクサ洪水作戦の出来事とイスラエルの主張に対する反論
 第三に、透明性のある国際調査に向けて
 第四に、ハマースとは何者かを世界に知らせる
 第五に、何が必要か?

【第一】何故アル・アクサ洪水作戦なのか?
1.    占領と植民地主義に対するパレスチナ人民の戦いは、10月7日に始まったのではなく、30年間のイギリスの植民地主義と75年間のシオニスト占領を含む105年前に始まった。1918年、パレスチナ人民はパレスチナの土地の98.5%を所有し、パレスチナの人口の92%を占めていた。一方、イギリスの植民地当局とシオニスト運動の協調による大量移民キャンペーンによってパレスチナに連れてこられたユダヤ人は、パレスチナの歴史的な土地におけるシオニストなるものが報じられた1948年以前には、パレスチナの土地の6%に満たない部分を支配し、人口の31%を占めていた。当時、パレスチナ人民は自決権を奪われ、シオニストのギャングたちはパレスチナ人民を土地や地域から追放することを目的とした民族浄化作戦を展開した。その結果、シオニストのギャングたちは、パレスチナの土地の77%を武力で掌握し、パレスチナ人民の57%を追放し、500以上のパレスチナの村や町を破壊し、パレスチナ人民に対して何十もの虐殺を犯し、そのすべてが1948年のシオニスト権力機関の設立に帰結した。イスラエル軍はさらに攻撃を継続し、1967年にパレスチナ周辺のアラブ地域に加え、ヨルダン川西岸地区、ガザ地区、エルサレムを含むパレスチナの残りの地域を占領した。

2.    この長い数十年に渡って、パレスチナ人民は、あらゆる形態の抑圧、不正、基本的諸権利の剥奪、アパルトヘイト政策に苦しんできた。例えばガザ地区は、2007年以来17年間にわたる息苦しい封鎖に苦しみ、世界最大の野外刑務所となっている。ガザのパレスチナ人民はまた、5つの破壊的な戦争、侵略に苦しみ、その全てが「イスラエル」*2が攻撃の当事者であった。2018年にガザの人民は、イスラエルの封鎖と悲惨な人道状況に平和的に抗議し、帰還の権利を要求するために、帰還の大行進を始めた。しかしイスラエル占領軍は、これらの抗議行動に残忍な武力で応戦し、わずか数ヶ月の間に360人のパレスチナ人民が殺害され、5,000人以上の子どもを含む19,000人が負傷した。

3.    公式統計によると、2000年1月から2023年9月までの期間に、イスラエルの占領軍は11,299人のパレスチナ人民を殺害し、156,768人を負傷させた。残念ながら米国政府とその同盟諸国は、過去数年間、パレスチナ人民の苦しみに注意を払わず、イスラエルの侵略を隠蔽してきた。彼らは、10月7日に殺害されたイスラエル兵を嘆くだけで、何が起こったのかの真実を追及せず、イスラエルの民間人を標的にしたとされていることを非難するイスラエルの説明に不当にも従った。アメリカ政府は、パレスチナの民間人に対するイスラエル占領下の虐殺とガザ地区への残忍な侵略に、財政的・軍事的支援を提供してきた。そして未だに、イスラエル占領軍がガザで犯している量殺戮を無視し続けている。

4.    イスラエルの人権侵害と残虐行為は、アムネスティ・インターナショナルやヒューマン・ライツ・ウォッチを含む多くの国連諸機関や国際人権諸団体によって記録され、イスラエルの人権団体によっても記録されている。しかしこれらの報告や証言は無視され、イスラエルの占領は未だに責任を問われていない。例えば、2021年10月29日にイスラエルのギラッド・エルダン国連大使は、国連総会での演説中に国連人権理事会の報告書を破り捨て、演壇を去る前にゴミ箱に捨てて国連体制を侮辱した。しかし翌年の2022年には、国連総会の副議長に任命されたのである。

5.    アメリカ政府とその西側同盟諸国は、常にイスラエルを、法を超越した国家として扱ってきた。彼らは、占領を長引かせ、パレスチナ人民を弾圧し続けるために必要な隠れ蓑を提供し、また「イスラエル」がそのような状況を利用して、さらなるパレスチナの土地を収用し、彼らの尊厳と聖地をユダヤ化することを許している。国連は過去75年間、パレスチナ人民に有利な900以上の決議を採択してきたにも拘わらず、「イスラエル」はこれらの決議のいずれにも従うことを拒否し、米国の拒否権は、「イスラエル」の政策や決議違反に対する如何なる非難をも防ぐために、国連安全保障理事会において常に発動されてきた。だから我々は、米国や他の西側諸国が、イスラエルの占領とその犯罪の、パレスチナ人民の継続的苦悩についての共犯者であり協力者であると見做しているのである。

6.    「平和的解決プロセス」についてであるが、1993年にパレスチナ解放機構(PLO)との間で調印されたオスロ合意は、ヨルダン川西岸地区とガザ地区にパレスチナ独立国家を樹立することを規定していたにもかかわらず、「イスラエル」は、被占領ヨルダン川西岸地区とエルサレムにおける入植地の建設とパレスチナの土地のユダヤ化という広範なキャンペーンを通じて、パレスチナ国家を樹立するあらゆる可能性を組織的に破壊した。
 30年後、和平プロセスの支援者たちは、自分たちが行き詰まり、そのようなプロセスがパレスチナ人民に壊滅的な結果をもたらしたことに気が付いた。イスラエル当局は、パレスチナ国家の樹立を断固として拒否することを数度に渡り確認した。アル・アクサ洪水作戦のちょうど1カ月前、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ヨルダン川西岸地区とガザ地区を含むヨルダン川から地中海まで広がる「イスラエル」を描いた、「新中東」と言われる地図を提示した。国連総会の演壇に集まった全世界は、パレスチナ人民の諸権利に対する傲慢さと無知に満ちた彼の演説に沈黙した。

7.  75年にわたる容赦ない占領と苦難の後、解放と人民への帰還のためのあらゆる発意が失敗し、いわゆる和平プロセスの悲惨な結果の後、パレスチナ人民は世界に次の事柄への対応を期待した。
★ イスラエル人入植者たちの聖なるモスクへの侵入の増大と、また同じく祝福のアル・アクサ・モスクの時間的・空間的分離を試みるイスラエルのユダヤ化計画について。
★ パレスチナ人民を彼らの家や地域から追放するイスラエルの公式タイム・テーブルに基づく諸計画の中で、ヨルダン川西岸地区全体とエルサレム全体をいわゆる「イスラエルの主権」に併合する方向に、事実上一歩を踏み出している右翼過激派のイスラエル政府の諸行為について。
★ イスラエルのファシスト大臣イタマール・ベン・グヴィルの直接の監督下で、基本的諸権利の剥奪や暴行や屈辱を経験しているイスラエルの刑務所に拘禁されている何千人ものパレスチナ人について。
★  17年間にわたってガザ地区に押しつけられた不当な空、海、陸の封鎖について。
★   同じく、ヨルダン川西岸地区における前例のないレベルのイスラエル人入植地の拡大と、入植者たちがパレスチナ人民とその財産に対して日常的に行っている暴力行為について。
★ 難民キャンプやその他の地域において極限状態で暮らしており、故郷への帰還を望んでいる、75年前に追放された700万人のパレスチナ人民について。

【第二】アル・アクサ洪水作戦の出来事とイスラエルの主張に対する反論
 国際社会の失敗とパレスチナ国家樹立妨害のための諸超大国の共謀。それらすべての後で、パレスチナ人民は何を期待されたのだろうか? 待ち続けることを、無力な国連に期待し続けることをか?! それとも、防衛行為は諸国際法と諸規範と諸条約に謳われている権利であることを認識し、パレスチナ人民及びパレスチナ人民の土地と諸権利と尊厳を守るために率先して行動することをか?!
 以上のことからして、10月7日のアル・アクサ洪水作戦は、パレスチナ人民とその大義に対するイスラエルのあらゆる陰謀に立ち向かうために必要なステップであり、正常な反応であった。それは、イスラエルの占領を終わらせ、パレスチナ人民の諸権利を取り戻し、世界中のすべての人々がそうであったように、解放と独立への道を歩むという枠組みの中での防衛行為であった。10月7日のアル・アクサ洪水作戦に関するイスラエルの捏造された告発と主張とその影響を考慮して、我々イスラーム抵抗運動ハマースは以下のことを明言する。

1.    10月7日のアル・アクサ洪水作戦は、イスラエルの軍事施設を標的とし、敵の兵士を逮捕し、イスラエル当局に圧力をかけ、囚人交換取引を通じてイスラエルの刑務所に収容されている何千人ものパレスチナ人民の釈放を目的とした。それ故この作戦は、ガザ周辺のイスラエル人入植地近くに駐屯するイスラエル軍の施設であるイスラエル軍のガザ師団を破壊することに重点を置いた。

2.    民間人、特に子供、女性、高齢者への危害を避けることは、アル・カッサム旅団の戦闘員全員による宗教的・道徳的誓いである。我々は、パレスチナのレジスタンスが作戦の期間中、完全に規律正しく、イスラーム的価値観に誓った行動をしていたこと、そしてパレスチナの戦闘員は、占領軍兵士と、我が人民に対して武器を使用した者だけを標的にしていたことを改めて表明する。その間パレスチナの戦闘員は、精密な武器を保有していないにも拘わらず、民間人に危害を加えることをできる限り避けようとしていた。また、民間人を標的にした事例があった場合、それは偶発的に占領軍との対決の過程で起こったものである。

3.    1987年の設立以来、ハマース運動は民間人への危害を避けることを約束してきた。1994年、シオニストの犯罪者バールーフ・カッペル・ゴールドシュテイン*3が、占領下のヘブロン市のアル・イブラヒミ・モスクでパレスチナ人崇拝者に対する虐殺を犯した後、ハマース運動は、民間人が戦闘の矢面に立たされるのを避けるためのイニシアチブを発議したが、イスラエル占領軍はそれを拒否し、それについて何のコメントもしなかった。
 ハマース運動はそのような呼びかけを何度か繰り返したが、パレスチナの民間人を意図的に標的にし、殺害し続けたイスラエルの占領軍は耳を貸さなかった。

4.    アル・アクサ洪水作戦の実施中に、イスラエルの治安・軍事システムの急速な崩壊と、ガザとの国境地帯で引き起こされた混乱のために、何らかの欠陥が起こったのかもしれない。多くの人々が証言しているように、ハマース運動は、ガザに拘禁されているすべての民間人に積極的かつ親切な態度で対処し、攻撃の初期から彼らを解放することを求めている。
 そしてそのことが一週間の人道的停戦中に、イスラエルの刑務所からパレスチナ人女性と子供を解放することと引き換えに、これらの民間人が解放されるという形で起こったのである。

5.    10月7日のアル・カッサム旅団は、イスラエルの民間人を標的にしていたという主張をイスラエル占領者たちが広めたのは全くの嘘と捏造に過ぎない。これらの主張の源はイスラエルの公式説明であり、独立した情報源はそれらを証明していない。イスラエルの公式説明が、パレスチナ人の抵抗を悪魔化し、ガザに対する残忍な侵略を合法化しようとしてきたことは、よく知られた事実である。イスラエルの主張に反するいくつかの詳細を以下に挙げる。
★ その日(10月7日)に撮影されたビデオクリップと、後に公開されたイスラエルの人々自身の証言は、アル・カッサム旅団の戦闘員が民間人を標的にしておらず、混乱のためにイスラエル軍と警察によって多くのイスラエル人が殺害されたことを示している。
★ またパレスチナの戦闘員による「40人の斬首された赤子」の嘘も断固として反論されており、イスラエルの情報源でさえこの嘘を否定している。残念ながら欧米のマスコミの多くは、この主張を採用し、宣伝した。
★ パレスチナの戦闘員がイスラエル人女性を強姦したというほのめかしは、ハマース運動を含めて完全に否定された。2023年12月1日のニュースサイト「モンドワイス」*4の報道などによると、10月7日にハマースのメンバーが犯したとされる「集団レイプ」の証拠はなく、イスラエルはそのような主張を「ガザでの大量虐殺を煽るために」利用したという。
★ イスラエルの10月10日のイェディト・アハロノト紙と11月18日のハアレツ紙の2つの報道*5によると、多くのイスラエル民間人がイスラエル軍のヘリコプターによって殺害され、特にガザ近郊のノヴァ音楽祭に参加していた364人のイスラエル民間人が殺害された。
 2つの報告によると、ハマースの戦闘員は、祭りの事前知識なしに祭りの地域に到着し、そこでイスラエルのヘリコプターがハマースの戦闘員と祭りの参加者の両方に発砲したという。イェディオス・アフロノス紙はまた、イスラエル軍はガザからのさらなる侵入を阻止し、イスラエル人がパレスチナ人戦闘員に逮捕されるのを防ぐため、ガザ地区周辺の300以上の標的を攻撃したと言う。
★ 他のイスラエルの証言は、イスラエル軍の襲撃と兵士の作戦が多くのイスラエル人捕虜とその捕獲者を殺害したことを裏付けている。
 イスラエル占領軍は、パレスチナのレジスタンスとの捕虜交換を避けるため、「生け捕りにするよりは、死んだ民間人の人質や兵士のほうがまし」と明言するイスラエル軍の悪名高い「ハンニバル指令」*6を適用し、パレスチナ人戦闘員とイスラエル人が中にいるイスラエル人入植地の家屋を爆撃した。
★ さらに、占領当局は、殺害されたパレスチナ人戦闘員の焼死体200体がパレスチナ人戦闘員のものであり、イスラエルの死体と混ざり合っていたことに気づき、殺害された兵士と民間人の数を1,400人から1,200人に修正した。これらのことは、10月7日に殺害し、燃やし、イスラエル地域を破壊した軍用機を所有しているのはイスラエル軍だけなのだから、戦闘員を殺害した人物がイスラエル人を殺害した人物であることを意味している。
★ 60人近いイスラエル人捕虜を殺害したガザ全域でのイスラエルの激しい空爆は、イスラエル占領軍がガザの捕虜の命を気にかけていないことの証明でもある。
★ また、ガザ周辺の入植地の多くのイスラエル人入植者が武装し、10月7日にパレスチナの戦闘員と衝突したことも事実である。これらの入植者は民間人として登録されていたが、実際にはイスラエル軍と共に戦っていた武装した男たちだった。
★イスラエルの民間人について語るとき、徴兵制は18歳以上のすべてのイスラエル人(男性は32ヶ月の兵役に就き、女性は24ヶ月就く)に適用され、全員が武器の携行と使用が可能であることを知らねばならない。これは、「武装した国民」というイスラエルの安全保障理論に基づいており、イスラエルなるものを「軍隊に付随した国」に変えてしまった。
★ 民間人の残忍な殺害は、イスラエルなるものの組織的アプローチであり、パレスチナの人々を辱める手段の一つである。ガザでのパレスチナ人の大量殺戮は、そのようなアプローチの明白な証拠である。
★ アルジャジーラのニュースチャンネルは、そのドキュメンタリーの中で、イスラエルがガザを侵略した1カ月で、ガザでパレスチナ人の子どもが1日平均136人殺害されたのに対し、ロシア・ウクライナ戦争の過程でウクライナで殺害された子どもの平均は1日1人だったと述べた。
★ イスラエルの侵略を擁護する人々は、この出来事を客観的に見ようとはせず、ハマースの戦闘員を攻撃することで民間人を巻き込んでしまうとして、イスラエルによるパレスチナ人大量殺戮を正当化しようとする。
 しかし彼らは、10月7日のアル・アクサ洪水作戦に関しては、そのような想定を用いようとはしない。[訳者注:ハマースがイスラエルの民間人を巻き込んでしまうことは認めない。]

【第三】透明性のある国際調査に向けて
 我々は、公正で独立した調査が、我々の言説の真実性を証明し、イスラエル側の嘘と誤解を招く情報の規模を証明すると確信している。これには、パレスチナのレジスタンスがガザの病院を司令部として使用したというイスラエルの主張も含まれる。この主張は証明されておらず、多くの西側の報道機関の報道によって反論された。

1.    パレスチナは国際刑事裁判所(ICC)の加盟国であり、2015年にローマ規約に加盟した。パレスチナが自国領土で行われたイスラエルの戦争犯罪の調査を求めたところ、イスラエルの非妥協的な態度と拒絶、そしてICCへの要請を理由にパレスチナ人を処罰するとの脅しに直面した。また、正義の価値観を持っていると主張する大国が、占領者側に全面的に賛同し、国際司法制度におけるパレスチナの動きに反対していたことも残念である。これらの権力は「イスラエル」を、法を超越した国家として維持し、法的責任と説明責任を免れようとしている。

2.    我々は、これらの国々、特に米国政府、ドイツ、カナダ、英国に対して、彼らが主張するように正義が勝つことを意図するのであれば、占領下のパレスチナで行われた全犯罪の捜査過程への支持を表明し、国際法廷が効果的に職務を遂行することを全面的に支持すべきであると強く訴える。

3.    これらの国々が正義を支持しているとすることには疑問があるが、我々はICC検察官とそのチームに対し、ただ遠くから、あるいはイスラエルの規制下で状況を傍観するのではなく、被占領パレスチナに今すぐに直接赴き、そこで行われた犯罪や違反を調査するよう強く求める。

4.    2022年12月、国連総会が「イスラエル」によるパレスチナ領土の不法占拠の法的結論について国際司法裁判所(ICJ)に意見を求める決議を可決した際、「イスラエル」を支持する(少数の)国々は、100カ国近くが承認したこの動きを拒否すると発表した。そして、わが人民と法律・人権諸団体が、普遍的管轄権*7の制度を通じて欧州諸国の法廷でイスラエルの戦争犯罪に対する訴追を行おうとしたとき、欧州の諸政権は、イスラエルの戦争犯罪人が自由の身であり続けられるよう、その動きを妨害した。

5.    10月7日の出来事は、より広い文脈の中に位置づけられ、現代における植民地主義と占領に対する闘争のすべての事例が喚起されなければならない。これらの闘争の経験は、(イスラエルの)占領者によって犯されたのと同じレベルの抑圧の下では、占領下の人民は同様の反応をするだろうことを示している。

6.    事実を見ようとしない偏見*8を正当化し、自己の犯罪を隠蔽しようとするイスラエルの説明の試みを支持するこれらの政府による嘘と欺瞞の大きさを、パレスチナ人民と全世界の人民は明確に理解している。これらの国々は、紛争の根本的な原因が占領であるということ、パレスチナ人民が自分たちの土地で尊厳を持って生きる権利が否定されていることだということを知っている。これらの国々は、ガザの何百万人ものパレスチナ人民に対する不当な封鎖の継続に対して、また基本的権利がほとんど完全に否定された状況下にあるイスラエル刑務所内の何千人ものパレスチナ人被拘禁者に対して、何の関心を示さない。

7.    我々は、イスラエルの犯罪と虐殺に対する拒絶を表明し、パレスチナ人民の権利と正当な大義への支持を示すために、世界中のすべての首都と都市に集結する、様々な宗教やエスニシティ*9や諸背景を持つ世界の自由な諸人民を歓迎する。

【第四】ハマースとは何者なのかを世界に知らせる
 イスラーム抵抗運動「ハマース」は、パレスチナのイスラーム民族解放・抵抗運動である。その目標は、パレスチナを解放し、シオニストの計画に立ち向かうことである。その依拠する枠組みはイスラーム教であり、それが、ハマースの原則、目的、手段を決定する。ハマースは、民族主義的、宗教的、宗派的な理由による迫害や権利の侵害を拒絶する。

1.    ハマースは、自分たちの闘争はシオニストの計画に対するものであり、ユダヤ人の宗教に対するものではないと断言する。ハマースは、ユダヤ人がユダヤ人であるが故にユダヤ人に対して闘争を繰り広げるのではなく、パレスチナを占領するシオニストに対して闘争を行う。それにもかかわらずシオニストは、ユダヤ教及びユダヤ人を、彼ら自身の植民地計画及び違法な実体と常に同一視している。[訳者注:その同一視の結果として、シオニストは、彼らの不法な占領に対する批判を、「反ユダヤ主義だ」などというのである。]

2.    パレスチナ人民は、抑圧、不正、そして民間人に対する虐殺に対して、誰が犯したかに拘わらず常に反対してきた。そして、我々の宗教的、道徳的価値観に基づいて、我々はユダヤ人がナチス・ドイツによって被ったことに対する拒絶を明確に表明した。ここで我々は、ユダヤ人問題は本質的に欧州の問題であったが、一方でアラブとイスラームの環境は、歴史を通して、ユダヤ人民や他の信仰やエスニシティを持つ諸人民にとっての安全な避難所であったことを思い起こす。アラブとイスラームの環境は、共存、文化交流、宗教の自由の模範であった。現在の紛争は、シオニストの攻撃的な行動と西側の植民地勢力との同盟によって引き起こされている。それゆえ我々は、パレスチナ人民に対する抑圧を正当化するために、欧州におけるユダヤ人の苦しみを利用することを拒絶する。

3.    国際法と国際規範に従ったハマース運動は、明確な目標と使命を持つ民族解放運動である。それは、パレスチナ人民の自衛権、解放権、民族自決権により、占領に抵抗する正当性を得ている。ハマースは、被占領パレスチナ地域におけるイスラエルの占領に対する戦いと抵抗をできるだけ限定しようとしたが、イスラエル占領軍はそれに従わず[訳者注:攻撃対象を拡大し]、パレスチナ域外のパレスチナ人民に対する殺人と大量殺戮を行った。

4.    我々が武装抵抗を含むあらゆる手段で占領に抵抗することは、あらゆる規範、神聖な宗教、ジュネーブ諸条約及びその最初の追加議定書を含む国際法、並びに1974年11月22日の第29回国連総会で採択された国連総会決議第3236号 —— それは、自決権と、追放され、立ち退きを命じられ、根こそぎにされた家と財産を復元する帰還権を含むパレスチナにおけるパレスチナ人民の不可侵の諸権利を確認した —— 等の関連する国連諸決議によって正当化されている権利であることを、我々は強調する。

5.    我が揺るぎなきパレスチナ人民とその抵抗勢力は、最長の残忍な植民地占領から自分たちの土地と国家の諸権利を守るために英雄的な戦いを繰り広げている。パレスチナ人民は、パレスチナの民間人(その大半は子供と女性)に対して前例のない凶悪な虐殺を行っているイスラエルの侵略に立ち向かっている。イスラエルの占領軍は、ガザへの侵略の過程で、ガザの人民から食料、水、医薬品、燃料を奪い、あらゆる生活手段を奪った。その間、イスラエルの戦闘機は、ガザからパレスチナ人を追い出すことを狙った民族浄化の明確なサインとして、学校、大学、モスク、教会、病院を含むガザのすべてのインフラと公共の建物を野蛮に攻撃した。しかしイスラエル占領の支援者たちはそれを止めようとせず、我が国民に対する大量虐殺を継続させ続けたのである。

6.    イスラエル占領軍が、パレスチナ人に対する抑圧を正当化するために「自衛」を口実に用いるのは、嘘と欺瞞と事実の捻じ曲げにほかならない。イスラエルなるものには、その犯罪と占領を擁護する権利はないが、パレスチナ人民には占領者に占領を終わらせるよう強制する権利がある。2004年、国際司法裁判所(ICJ)は、「被占領パレスチナ地域における壁建設の法的帰結」に関する訴訟において、残忍な占領軍である「イスラエル」は、パレスチナ自治区にそのような壁を建設するために自衛権に依拠することはできないと述べた勧告見解を示した。さらに、国際法上、ガザは依然として占領地であり、ガザ侵略の正当化は根拠がなく、法的資格を欠いており、自衛の理念の本質を欠いている。

【第五】何が必要か?
 占領は、それをどう表現しようとも、或いはどう名付けようとも占領であり、人民の意志を打ち砕き人民を抑圧し続けるための道具であり続けている。他方で、占領と植民地主義から如何にして脱却するかという歴史上の民族国家*10の諸経験は、抵抗が戦略的アプローチであり、自らを解放して占領を終わらせる唯一の方法であることを確証している。闘争、抵抗、犠牲なしに占領から解放された国家*11があるだろうか。人道的、倫理的、法的義務は、世界中のすべての国々が、パレスチナ人民の抵抗を支持し、結託してそれに敵対しないよう求めている。さらに、占領犯罪と侵略に立ち向かうと共に、パレスチナ人民の土地を解放し、世界中のすべての人民と同様に、自決権を行使するためのパレスチナ人民の闘いを支援することを求めている。それに基づいて、我々は以下のように呼び掛ける。

1.    イスラエルのガザ侵略、ガザの全住民に対する犯罪と民族浄化を直ちに停止し、検問所を開放し、復興諸手段を含む人道支援物資のガザへの搬入を認めること。

2.    イスラエルの占領がパレスチナ人民に与えた人的苦痛の法的責任を追及し、民間人、インフラ、病院、教育施設、モスク、教会に対する犯罪の責任をイスラエルに負わせること。

3.    国際法と国際諸規範の下で正当とされる権利としてのあらゆる手段によって、イスラエルの占領に立ち向かうパレスチナ人の抵抗を支援すること。

4.    我々は、全世界の自由な人民に対して、特に、パレスチナ人民の苦しみを理解している植民地化された国々に対して、イスラエルの占領を支持する諸大国が採用している二重基準政策に対して、真剣で効果的な姿勢を採るよう呼び掛ける。我々は、これらの国々に対して、パレスチナ人民との世界的な連帯運動を開始し、正義と平等の価値、そして自由と尊厳の中で生きる人民の権利を強調するよう呼び掛ける。

5.    超大国、特にアメリカ、イギリス、フランスなどは、シオニストなるものが責任を隠蔽するのに手を貸すことを止め、法を超越した国としてそれを扱うことを止めなければならない。これらの国々によるそのような不当な振る舞いは、75年以上に亘たるイスラエルの占領が、パレスチナ人民の土地と尊厳に対する史上最悪の犯罪を犯すことを可能にした。我々は今日、以前にも増して、世界中の国々に対して、占領の終結を求める国際法及び関連する国連諸決議に対する自分たちの責任を堅守するよう要請する。

6.    我々は、ガザの将来を決定することを目的とした、占領を長引かせるだけの国際的諸計画或いはイスラエルの諸計画を断固として拒否する。我々は、パレスチナ人民がパレスチナ人の将来を決定し、自分たちの内政を解決する能力を持っており、従って世界の如何なる部分も、自分たちをパレスチナ人民の何らかの形の後見人にすることを強要したり、或いはパレスチナ人民の利益に関する決定を下したりする権利を持っていないことを強調する。

7.    我々は、特に1948年に占領された土地とヨルダン川西岸地区で、パレスチナ人民に新たな追放の波、あるいは新たなナクバを起こそうとするイスラエルの試みに反対するよう強く求める。我々は、シナイ半島やヨルダンへの、或いはその他の如何なる場所への追放も行わず、パレスチナ人の移住があるとすれば、それは多くの国連決議によって確認されているように、1948年にパレスチナ人が追放された彼らの家や地域へ向けられることを強調する。

8.    我々は、占領を終わらせるまで、世界中の民衆の圧力を維持することを求める。我々は、イスラエルなるものとの正常化の試みに反対し、イスラエルの占領とその支援者に対する包括的なボイコットを呼びかける。

労働者と抑圧された者とのいたる所での連帯における
『社会主義者の活動』

 

【Ⅲ】ハマース憲章(2017)全文(仮訳)

 この文書はWebサイト「中東の眼〔MEE〕(英文)」から川下が訳しました。本文の前に、Webサイト「世界のニュース」に載った紹介文を付けました。

 

 当初の憲章はすべてのユダヤ人に対する暴力的な表現で批判され、一部の評論家はそれを大量虐殺の扇動とみなした。2008年、ガザのハマースの指導者、イスマイル・ハニヤは、ハマースが1967年の国境沿いにパレスチナ国家を受け入れ、イスラエルとの長期停戦を申し出ることに同意すると述べた。2009年のBBCとのインタビューでトニー・ブレアは、ハマースはイスラエルの存在を認めておらず、テロと暴力を通じてその目的を追求し続けていると主張した。しかし、ジェレミー・グリーンストック卿は、ハマースは2006年のパレスチナ議会選挙で勝利して以来[訳者注:実際は選挙の前に]、その憲章を政治計画の一部として採用していないと主張した。代わりに、より世俗的な立場に移行した。2010年、ハマースの指導者ハリド・メシャールは、憲章は「歴史の一部であり、もはや意味を持たないが、内部的な理由で変更することはできない」と述べた。ハマースは候補者擁立を決定して以来、その憲章から遠ざかっている。

 2017年の憲章は、1967年以前に存在した国境内にパレスチナ国家を設立するという考えを初めて受け入れ、「シオニストの敵」と呼ぶイスラエルの承認を拒否した。このような国家を過渡期として主張しているが、同時に「パレスチナ全土の解放」も主張している。

 6日間戦争から20年後の1987年に、第一次インティファーダ(1987 ~ 1993 年)が始まった。1980年代後半、パレスチナ解放機構は二国家解決という形でイスラエルとの交渉による解決を模索した。これはムスリム同胞団のパレスチナ部門であるハマースには受け入れられず、この規約はPLOとムスリム同胞団の間のイデオロギー的な溝を埋めるために書かれた。ハマースの外務副大臣アハメド・ユセフ博士によると、この憲章は「1988年の蜂起という特殊な状況の中で、容赦ない占領に対処するために必要な枠組みとして批准された。

『世界のニュース』

 

ハマース*12憲章(2017)全文
ハマース、42条の文書で一般原則と目的を説明

 すべての世界の主であるアッラーに讃美あれ。使徒たちの長でありムジャーヒディン(聖戦士)*13の指導者であるムハンマドと彼の家族と彼のすべての仲間たちに、アッラーの平安と祝福あれ。

前文

 パレスチナはアラブ系パレスチナ人の土地であり、彼らはそこで生まれ、そこに根付き、そこに帰属し、それに手を差し伸べ、それについて話し合っている。
 パレスチナは、イスラーム教によってそのステイタス(地位)が高められた土地であり、その信仰は、イスラーム教を高く評価し、それを通してその精神と正しい価値を呼吸し、パレスチナを守り保護するドクトリン(基本原則)のための基礎を築いている。
パレスチナは、自分たちの権利を確保することも、自分たちから奪われたものを自分たちに取り戻すこともできない世界に失望させられた人々の大義であり、自分たちの土地が占領 ―― それは、この世界における最悪のタイプの一つである ―― を被り続けている人々の大義である。

 パレスチナは、人種差別的、反人間的、植民地的シオニスト計画によって占領された土地であるパレスチナは、偽りの約束(バルフォア宣言*14)に基づいて、そして武力による既成事実の押し付けに基づいて創出された、人種差別的で反人間的で植民地主義的でシオニズム的な計画によって占領された土地である。
 パレスチナは、解放が達成されるまで、返還が実現するまで、そしてエルサレムを首都とする完全な主権国家が誕生するまで続く抵抗を象徴している。
パレスチナは、解放という崇高な目的に向けた、あらゆる所属のパレスチナ人たちの真のパートナーシップ(共同)である。
 パレスチナはウンマ(共同体)*15の精神であり、その中心的大義である。それは人間の魂であり、生きた良心である。
 この文書は、我々を力強い合意に導いた深い検討の産物である。運動として、我々は以下のページで概説されているビジョン(未来図)の理論と実践の両方について合意した。
 それは確固たる根拠と確立された諸原則に基づいた未来図である。この文書は、民族的統一を強化するための目標、里程標、および方法を公けにしている。それはまた、パレスチナの大義、それを推進するために我々が用いる行動原則についての、またそれを解釈するために用いられる柔軟性の限界についての、我々の共通の理解を定めている。

運動
1.  イスラーム抵抗運動『ハマース』は、パレスチナ人民のイスラーム民族解放・抵抗運動である。その目標は、パレスチナを解放し、シオニストの計画と対決することである。その基準の枠組みはイスラーム教であり、イスラーム教がその原理、目的、手段を決定する。

パレスチナの地

2.  東はヨルダン川から、西は地中海まで、北はラス・アル・ナクラ*16から、南はウンム・アル・ラシュラシュ*17まで広がるパレスチナは、一体の領土単位である。それはパレスチナ人民の土地であり故郷である。パレスチナ人民の土地からのパレスチナ人民の排除と追放、そしてそこにおけるシオニスト集団の定着は、パレスチナ人民の国土全体に対する権利を無効にするものではないし、また簒奪者シオニスト集団がそこに居るための如何なる権利をも固定するものでもない。

3.  パレスチナは、アラブ・イスラームの土地である。ここは、すべてのアラブ人の、すべてのイスラーム教徒の心の中に特別な場所を占めている祝福された神聖な土地である。

パレスチナ人民
4.  パレスチナ人民とは、パレスチナから追放されたか、そこに留まったかに関係なく、1947年までパレスチナに住んでいたアラブ人である。そしてその日以降に、アラブ系パレスチナ人の父親から生まれた人は、パレスチナの内外を問わず、すべてパレスチナ人民である。カタストロフィ(ナクバ=大惨事)*18は、パレスチナ人民のアイデンティティ(固有性)を消すことも否定することもできない。

5.  パレスチナ人のアイデンティティは本物であり、時を超えたものである。それは、世代から世代へと受け継がれる。 シオニストによる占領と強制移住政策の結果、パレスチナ人民に降りかかった大惨事は、パレスチナ人民のアイデンティティを消し去ることもできず、それを否定することもできない。パレスチナ人は、第二国籍を取得することによって、民族としてのアイデンティティや諸権利を失ってはならない。

6.  パレスチナ人民は、宗教、文化、政治的所属に関係なく、パレスチナ内外のすべてのパレスチナ人から構成される一つの民族である。

イスラーム教とパレスチナ
7.  パレスチナは、アラブ・イスラーム共同体の中心にあり、特別な地位を享受している。パレスチナの内部にエルサレムがあり、その区域はアッラーの祝福を受けている。パレスチナはアッラーが人間を祝福した聖地である。それは、イスラーム教徒にとって最初のキブラ(祈りの方角)*19であり、預言者ムハンマド(彼の上に平安あれ!*20)によってなされた夜の旅*21の目的地である。そこは、彼が昇天した場所である。
 そこはイエス・キリスト*22(彼の上に平安あれ!)の誕生の地であり、その土壌には何千人もの預言者、サハビ*23、ムジャーヒディンの遺骨が埋まっている。そこは、エルサレムとその周辺において真理を守ると決意した人々の土地であり、彼らは、反対する者や裏切る者によってもひるむことも、脅されることもなく、アッラーの約束が実現するまでその使命を遂行し続けるであろう。

8.  イスラーム教は、その正しくバランスの取れた中道路線と穏健な精神の美徳により、いつでもどこでも、ハマースにとって、目的に適した包括的な生活様式と秩序を提供する。イスラーム教は、平和と寛容の宗教である。それは、他の信条や宗教の信奉者が、安心・安全に自分たちの信条を実践できるための傘を提供する。またパレスチナは、これまで、そしてこれからも、共存、寛容、文明革新のモデルであると、ハマースは信じている。

9.  ハマースは、イスラーム教のメッセージが、真実、正義、自由、尊厳の価値を擁護し、あらゆる形態の不正を禁止し、宗教、人種、性別、国籍に関係なく、抑圧者を有罪とするものであると信じている。イスラーム教は、あらゆる形態の宗教的、民族的、または宗派的な過激主義と偏見に反対する。侵略に立ち向かうこと、抑圧されている人々を支援することの価値を信者に教えるのは宗教である。それは彼らに、自分たちの尊厳、土地、民族、聖地を守るために、惜しみなく与え、犠牲を払うよう動機づける。

エルサレム
10.  エルサレムは、パレスチナの首都である。その宗教的、歴史的、文明的地位は、アラブ人、イスラーム教徒、そして世界全体にとっての根本原理である。そのイスラーム教とキリスト教の聖地は、排他的に、パレスチナ人民とアラブ人とイスラーム共同体に属している。エルサレムの石は、一つたりとも明け渡したり放棄したりすることはできない。占領者たちがエルサレムで行ったユダヤ化、入植地建設、現地での既成事実化などの諸措置は、根本的に無であり空(無効)である。

11.  祝福されたアル・アクサ・モスクは、我が国の人民と我が国の共同体にのみ属しており、占領者はそれに対するいかなる権利も有さない。アル・アクサをユダヤ化し、分割しようとする占領者たちの陰謀、措置、試みは無であり空であり違法である。

難民と帰還の権利
12. パレスチナの大義は、その本質において、占領された土地と追放された人民の大義である。パレスチナ難民と被追放者が、1948年に占領された土地であろうと、1967年に占領された土地(つまりパレスチナ全土)であろうと、追放された、あるいは帰還を禁止された故郷に戻る権利は、個人と集団の双方にとって自然の権利である。この権利は、人権と国際法の基本的諸原則によって確認されており、また同様にすべての宗教法によって承認されている。これは譲渡できない権利であり、如何なる当事者 ―― パレスチナの、アラブの、あるいは国際的な ―― も、これを売り渡すことができない。

13.  ハマースは、難民をパレスチナ国外に定住させたり、代替祖国のプロジェクトを通じて難民を定住させようとしたりする試みを含め、難民の権利を消し去ろうとするあらゆる試みを拒否する。パレスチナ難民を追放し、土地を占領した結果として受けた損害に対するパレスチナ難民への補償は、帰還の権利と連動した絶対的な権利である。彼らは。帰還時に補償金を受け取ることになっており、これは彼らの帰還の権利を否定したり減じたりするものではない。

シオニズム計画
14.  シオニズム計画は、他人の財産の接収を基礎とした、人種差別的・攻撃的・植民地主義的・拡張主義的な計画である。それは、パレスチナ人民と、彼らの自由・解放・帰還・民族自決への願望に対して敵対的である。イスラエルの正体は、シオニズム計画の玩具であり、侵略の拠点である。

15. シオニズム計画は、パレスチナ人民だけをターゲットにしているわけではない。それはアラブとイスラーム共同体の敵であり、その安全と利益に重大な脅威をもたらしている。それはまた、統一・復活・解放を求める共同体の願望にも敵対的であり、共同体の諸困難の主要な源泉となっている。シオニズム計画はまた、国際安全保障と平和に、そして人類とその利益と安定に、危険をもたらしている。
 ハマースは、この紛争は宗教を理由とするユダヤ人との対立ではなく、シオニズム計画との対立であると断言する。

16.  ハマースは、この紛争は宗教を理由とするユダヤ人との対立ではなく、シオニズム計画との対立であると断言する。ハマースは、ユダヤ人であるという理由でユダヤ人に対して闘争を行うのではなく、パレスチナを占領するシオニストに対して闘争を行うのである。ユダヤ教とユダヤ人を、彼ら自身の植民地計画と違法な存在と、今も絶えず同一視しているのはシオニストたちである。

17. ハマースは、国家主義的、宗教的、または宗派的な理由によるいかなる人間の迫害も、あるいはその権利の侵害も拒否する。ユダヤ人問題、反ユダヤ主義、ユダヤ人迫害は、基本的には欧州の歴史に関連する現象であり、アラブ人やイスラーム教徒の歴史やその伝統に関係するものではないとの見解をハマースは持っている。西側諸国の援助によってパレスチナを占領することができたシオニズム運動は、入植地占領の最も危険な形態であり、すでに世界の多くの地域から姿を消しており、パレスチナからも姿を消さなければならない。

占領に対する立場と政治的解決策
18.  以下のものは無であり空(無効)だと見做される。バルフォア宣言、英国の委任統治、国連のパレスチナ分割決議、およびそれらに由来する、またはそれらに類似するあらゆる決議および措置。「イスラエル」の建国は完全に違法であり、パレスチナ人民の譲ることのできない権利に違反し、彼らの意志と共同体の意志に反している。それはまた、国際条約によって保障されている人権 —— その最たるものは自己決定権である —— を侵害するものである。

19.  シオニスト集団は絶対に認められない。占領、入植地の建設、ユダヤ化、あるいはその形状の変更や事実の改ざんという点からして、パレスチナの地に降りかかったものは何であれ、違法である。権利は決して失効しない。

20.  ハマースは、原因、状況、圧力に関係なく、また占領がどれだけ長く続いても、パレスチナの土地のいかなる部分も妥協したり譲歩したりしてはならないと信じている。ハマースは、川から海に至るまでのパレスチナの満足のいく完全な解放に代わる如何なる選択肢も拒否する。
 しかしながらハマースは、シオニストの存在を拒否することにおいて妥協することなく、またパレスチナ人民の如何なる権利も放棄することなく、1967年6月4日の線に沿ってエルサレムを首都とする完全な主権を有する独立したパレスチナ国家の樹立を考慮しており、避難民の帰還と追放されたわが家に戻すことが、国民的合意の公式でなければならない。

シオニスト集団の正当性は決して認められない
21.  オスロ合意とその附則は、パレスチナ人民の不可侵の諸権利を侵害する義務を生み出しているという点で、国際法の準拠規則に違反しているということを、ハマースは確認する。従って、運動はこれらの合意と、そこから派生するすべてのもの、例えばわが人民の利益を損なう義務、特に安全保障上の調整(協力)を拒否する。

22.  ハマースは、パレスチナの大義とパレスチナ人民の諸権利を損なうことを目的としたすべての合意、取り組み、入植計画を拒否する。この点において、如何なる立場も、発意も、また政治的計画も、如何なる形であっても、これらの諸権利を侵害してはならず、これらの諸権利に違反したり矛盾したりしてはならない。

23.  パレスチナ人民に対する犯罪、彼らの土地の強奪、祖国からの彼らの追放は、平和とは言えないことをハマースは強調する。これに基づいて合意に達したとしても、平和にはつながらない。パレスチナ解放のための抵抗と聖戦は、我が国の人民と共同体のすべての息子や娘にとっての正当な権利であり、義務であり、名誉であり続けるだろう。

抵抗と解放
24.  パレスチナの解放は、取り分けパレスチナ人民の義務であり、アラブおよびイスラーム共同体一般の義務である。それはまた、真実と正義の命によって必要とされる人道的義務でもある。パレスチナのために活動する諸機関は、国家機関、アラブ機関、イスラーム機関、人道機関を問わず、相互に補完し合い、調和しており、互いに衝突することはない。

25.  あらゆる手段と方法を用いて占領に抵抗することは、神の掟によって、また国際規範と法律によって保証された正当な権利である。これらの中心には武力抵抗があり、これはパレスチナ人民の諸原則と諸権利を守るための戦略的選択であるとみなされている。

26.  ハマースは、抵抗運動とその武器を弱体化させようとするあらゆる試みを拒否する。また抵抗の諸手段と諸機関を発展させる我が人民の権利を確認する。抵抗の拡大や縮小によって、あるいは抵抗の諸手段や諸方法の多角化によって抵抗運動をコントロールすることは、闘争をコントロールする過程の不可欠な部分であり、抵抗運動の原則を犠牲にするべきではない。

パレスチナの政治制度
27.  パレスチナの実際の国家は、解放された国家である。エルサレムを首都とするパレスチナ全土における完全な主権を持つパレスチナ国家に代わるものはない。

28.  多元主義、民主主義、民族的協調、他者の受容、対話の採用に基づいてパレスチナの諸関係を管理することを、ハマースは信じ、これを遵守する。その目的は、国家的目標の達成とパレスチナ人民の願望実現を目指すために、諸階層の団結と共同行動を強化することである。

パレスチナ解放機構(PLO)はパレスチナ人民のための国家的枠組みである
29.  PLO(Palestine Liberation Organization)は、パレスチナ内外のパレスチナ人民のための国家的枠組みである。従って、パレスチナ人の諸権利を守る形で、パレスチナ人民のすべての構成員と勢力の参加を確保するために、民主主義の基盤に基づいて維持、発展、再構築されるべきである。

30.  ハマースは、健全な民主主義の原則に基づいて、パレスチナの国家機関を構築する必要性を強調し、その中で最も重要なのは自由で公正な選挙である。その過程は、民族協調に基づき抵抗権を含む権利を遵守し、パレスチナ人民の願望を満たす明確な綱領と明確な戦略に従って行われるべきである。

31.  パレスチナ自治政府の役割は、パレスチナ人民に奉仕し、彼らの安全と諸権利、彼らの国家計画を守ることであるべきことを、ハマースは確認する。

32.  ハマースは、パレスチナ国家の意思決定の独立性を維持する必要性を強調する。外部勢力の介入は許されるべきではない。同時にハマースは、アラブ人とイスラーム教徒の責任、パレスチナをシオニストの占領から解放する上での彼らの義務と役割とを確認する。

33.  パレスチナ社会は、その卓越した諸個人、大人物、宗教的高位者、市民社会諸機関、そして国家的目標の達成と社会構築のために共に働き、抵抗を追求し、解放を達成する若者、学生、労働組合員、女性グループによって豊かになっている。

34.  パレスチナ人女性の役割は、パレスチナの歴史が作られる過程において常にそうであったように、現在と未来を築く過程においても基本的なものである。それは、抵抗の計画、解放、政治制度の構築において、枢要な役割を果たしている。

アラブ・イスラーム共同体
35.  ハマースは、パレスチナ問題がアラブ・イスラーム共同体の中心的大義であると信じる。

36.  ハマースは、共同体とその多様な構成員の統一を確信しており、共同体を分断し、その統一を損なう可能性のあるものを避ける必要があることを認識している。

37.  ハマースは、パレスチナ人の諸権利を支持するすべての国と協力することを信条としている。如何なる国の内政への介入にも反対する。また様々な国家間で起こる紛争や戦争に巻き込まれることも拒否する。ハマースは、世界の様々な国家に対して、特にアラブ諸国とイスラーム諸国に対して、門戸開放政策を採用している。ハマースは、一方でのパレスチナの大義とパレスチナ人民の諸利益が要請するものと、他方での共同体の諸利益およびその復興と安全保障とを組み合わせることを土台にして、均衡の取れた諸関係を確立するよう努めている。

人道的および国際的状況
38.  パレスチナ問題は、重大な人道的かつ国際的な諸特質を持つ問題である。この大義を支持して支援することは、真実、正義、そして共通の人道的価値の必須条件が要求する人道的・文明的任務である。

39.  法的および人道的観点から見ると、パレスチナの解放は合法的な活動であり、自衛行為であり、自己決定に対するすべての人々の自然権の表現である。

40.  ハマースは、世界の国々や人々との関係において、協力、正義、自由、そして人民の意志の尊重という価値観を信条としている。

41.  ハマースは、パレスチナ人民の諸権利を支援する諸国家、諸組織、諸機関の立場を歓迎する。ハマースは、パレスチナの大義を支持する世界の自由な人民に敬意を表明する。同時に、シオニストなるものへの支援や、その犯罪とパレスチナ人に対する侵略を隠蔽しようとする試みは、如何なる集団によるものであっても非難し、シオニスト戦争犯罪人の訴追を要求する。

42.  ハマースは、世界の他の諸国や諸民族に覇権を押し付けようとする試みを拒否するのとまったく同じように、アラブ・イスラーム共同体に覇権を押し付ける試みをも拒否する。ハマースはまた、世界のあらゆる形態の植民地主義、占領、差別、抑圧、侵略を非難する。

『MEE(中東の眼)』

 

【Ⅳ】ギリシャ共産党(KKE)のハマース及びパレスチナに関する見解
 この文書は、KKEのホームページ(英文&露文)から川下が訳しました。訳者が読者に特に注意を促したい部分、文字色を茶色で表示しています。

 

ガザ地区におけるパレスチナ人に対する
イスラエルの攻撃と虐殺についての
現在のイデオロギー的・政治的質問に対する短い回答
ギリシャ共産党中央委員会国際関係部による論説

 イスラエル国家による最近の軍事攻撃とガザ地区でのパレスチナ人民に対する虐殺から数時間も経たないうちに、ギリシャ共産党[KKE]はパレスチナ人民の側に立って戦闘的かつ原則的な立場で、数十の連帯活動を組織した。共産主義者は、ギリシャ全土で多くの労働者人民の動員を主導した。アテネでは、デモ参加者がイスラエル大使館まで行進し、米国大使館の外でも抗議活動を行った。KKEは、新民主主義党[ND]政府とその他の政党(急進左翼連合党[SYRIZA]、全ギリシャ社会主義運動党[PASOK]、民族主義的諸党)が国益の名の下にイスラエルを支援していることを糾弾した。この地域における米国とNATOの計画からギリシャを離脱させること、ギリシャのフリゲート艦をNATOの海外任務から召喚すること、米国とNATOの基地を閉鎖すること、「1967年6月4日以前に確立された国境での東エルサレムを首都とするパレスチナ国家を承認する」というギリシャ議会の決定の履行を要求した。

 さらにKKEは、問題の本質と諸衝突のより幅のある様相の両方扱ったジミトゥリス・クツムバス書記長の諸論説を、多くの言語(英語、アルバニア語、アラビア語、ブルガリア語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語、ロシア語、トルコ語)に翻訳して世界中の諸共産党と共産主義者たちに伝え、自身の立場を明らかにした。

 今日、我々は、世界各地から党中央委員会の国際関係部局に寄せられた質問、或いはKKEとその立場に対する論争の主題となっている質問に対して、幾つかの簡単な回答を行う必要があると考えている。

帝国主義者の犯罪を糊塗する言い訳としてのテロリズムの概念
 ブルジョア政治家たちやジャーナリストたちによって、時には善意で、時には悪意をもって、さまざまな側面から提起される疑問は、「なぜKKEはこの問題に関する立場でテロリズムを非難しないのか?」というものである。

 KKEは、数十年にわたってブルジョア階級と帝国主義勢力が、反人民的諸計画を推進し、帝国主義の介入と戦争を正当化するために、テロリズムの概念を利用してきたことをよく知っている。テロリズムは意のままに利用できる概念であるため、わが国を含むすべてのEU諸国で、労働者・農民・若者の闘いを対象とした、いわゆる反テロ法が推進されている。大規模動員中の職場や公共スペース、或いは街頭の占拠はテロ行為とみなされる可能性があり、それに対応する法規定や訴追が、闘う労働者・農民・学生に対して行使される可能性がある。

 同様に、テロリズムの概念は、ブルジョア階級の目的を果たすために、国際レベルでも使用されている。例えば、シリアにおける一連の犯罪の責任を負っている自由シリア軍は、米国とその同盟諸国にとってテロ組織ではないが、ハマースはテロ組織である。同様の例は、世界中のブルジョア階級の都合に応じて、タリバンやシリアのクルド人など、他の武装政治軍事組織にも見られる。

 さらにブルジョワジーのプロパガンダは、帝国主義者たちによって、彼らの目的のために、創設され、支援され、武装されたアルカイダやタリバンのような組織 —— 連中に対する統制を失うまでのことだが —— を、2006年の選挙で第一党となったハマースのような勢力と一括りにまとめている。この事実(訳者注:ハマースが選挙で第一党になったこと)は、このブルジョア権力が、イスラエル占領の暴力やガザ地区における他の政治勢力の行動の弱さに関連するさまざまな理由から、パレスチナ解放のために戦う人民諸勢力によって支援されてきたことを証明している。KKEは、この政治・軍事組織とイデオロギー的、政治的、哲学的見解が対立している。しかしそのこと*24は、長年にわたるイスラエルの占領が正当であると人々に思い込ませるために、ハマース撲滅のために行われているとされるガザの大量爆撃と数千人の幼い子どもたちの殺害を決して許すものではない。

 同時に、すべての証拠は、イスラエルの目的が、二国家解決策の中止、ガザ地区の炭素資源と地理的ポジションの奪取、パレスチナ人民に対するジェノサイドの凶行、そしてイスラエルによる虐殺で生き残った人々の砂漠への追放であることを示している。

 さらに、我々は、イスラエル当局が「ハマースの残虐行為」について捏造した証拠を全く信用しておらず、このフェイクニュースの多くは、ギリシャ人ジャーナリストが開催した公開イベントでの証拠の提示を含め、すでに誤りであることが暴かれている

 我々は、もう一つのことを考慮している。長年にわたるイスラエルの占領、抑圧、アパルトヘイトは、大きな怒り、報復、行過ぎを確実に引き起こし得る。パレスチナ人民に対して70年にわたり繰り広げられてきた戦争自体が、数十万人のパレスチナ人が殺害され、拷問されてきた残虐行為である。戦争の原因と性質に焦点を当てること、長年にわたるイスラエル占領の悲劇的な結果、そして解放のためにあらゆる手段を使って戦っている、そして戦う権利を持っているパレスチナ人民に対する虐殺に焦点を当てることが、労働者にとって決定的に重要である。

イスラエルは「米国の基地」
 KKEは、パレスチナ人民および「自分たちの国家を持ち、自分たちの土地の主人になる」という彼らの差し迫った必要性への全面的な連帯と支援を表明するとともに、ブルジョア国家イスラエルと反動的なネタニヤフ政権が推し進めた政策の犠牲者は、イスラエル人民そのものであることを指摘した。

 この声明は、反帝国主義者であることを主張しつつ、イスラエル国家を単に「米国の基地」だと形容してイスラエル国家の存在を認めず、とりわけ独自のプランを持つイスラエルのブルジョアジーとイスラエル人民の存在を認めない*25特定の勢力から敵意を向けられている。

 人民全体の生存権を否定するこれらの勢力は、自らの階級基準を放棄し、もっぱらいわゆる地政学的プリズムを通して展開を見ている。彼らは、人民が経験しているあらゆることの主要原因が、現在の段階、すなわち独占段階における野蛮な収奪システムにあることを見るのを拒否している。つまり独占段階では、諸独占体とブルジョワ諸階級の間の闘争が激化し、あらゆる手段によって行われている。これは、自国の労働者だけでなく、他国の労働者をも搾取することを意味し、原材料、商品の輸送ルート、地政学的ポジション、市場シェアなどを奪取することを意味する。

 従って第二次世界大戦後、米国、つまり勝利を収めて強化された資本主義大国は、第二次世界大戦におけるファシズムに対するソ連の勝利による貢献に付随して、植民地主義の崩壊後に形成された国々のブルジョワ階級と一方で付き合いながら*26、この地域において強力な地政学的支柱を、必要に応じて暴力に訴えることもできる「憲兵」および「守護者」を持つことを決定した。それが「資本主義の本質」であり、我々はそのことから関心を逸らせてはならない。

 イスラエル国家の存在は今日の現実である。第二次世界大戦前におけるナチスによるユダヤ人の大虐殺と多くの資本主義国におけるブルジョア諸階級が推進した反ユダヤ主義*27は、パレスチナ国家と並ぶイスラエル国家の建設を、ソ連と国際労働運動が容認することに導いた。この決定は、ブルジョア国家イスラエルによって挑戦的に破られてきた。イスラエルのブルジョアジーは、パレスチナ人の領土の大部分を奪い取ることによって、数十年にわたってパレスチナ人民のあらゆる権利を侵害してきた。米国とEUは、イスラエルのブルジョアジーとその国家に自分たちに必要な同盟者を見出し、同様に自分たちの立場を強化しようとするこの地域の他のブルジョワ諸階級とイスラエルとを仲裁する権利を手にした。ソ連社会主義の転覆後、さらに有害な形で展開されてきたこの地政学的ゲームの犠牲者は、パレスチナ人民全体であり、彼らは、長年その祖国を約束されてきたものの、その夢は未だに果たされていないのである。

 KKEは、あらゆる人民の権利と闘争を尊重する。その声明の中でKKEは、とりわけイスラエル人民もイスラエルのブルジョアジーとその国家の政策の犠牲者であり、その代償を支払っていることを強調している。我々は、イスラエルのすべての闘士たち、そして何よりもイスラエル共産党との連帯を表明する。現在ライオンの穴の中で闘っている、そしてパレスチナ人民に対する残虐行為に抗議する声を上げているイスラエルの共産主義者、ユダヤ人、アラブ人たちとの連帯を情明する。KKEの国会議員21名と欧州議会議員2名は、占領に反対する立場のためにイスラエル当局から迫害されているオフェル・カシフ議員との連帯文書に共同署名した。

民族解放闘争と社会主義
 パレスチナ人民の民族解放闘争についても疑問が提起されている。例えば、帝国主義の下で、特に今日の時代が資本主義から社会主義への移行の時代であると我々が言うとき、そのような闘争を行い得るのか。ある人々は、他のすべての場合においてKKEは社会主義が必要なこと、それが時機に適していることを語りながら、この場合はパレスチナ国家樹立の権利のみに焦点を当てていると言ってKKEを批判する。

 要約すれば、我々は次のことを強調したいと思う。今日、諸独占体が全世界を席巻しており、我々はレーニンが帝国主義と定義した資本主義の独占段階に生きているしかしこのことは、外国の占領に対する民族解放闘争が勃発することはあり得ないということを決して意味しない。パレスチナ人民は、祖国への権利を獲得することを目的として、正当な民族解放戦争、占領に対する戦争を行っている。これについては疑いの余地がない。イスラエルとその同盟国(アメリカ、NATO、EU)の観点からすれば、これは占領を永続させ、地域における彼らの利益に資することを目的とした不当な帝国主義戦争である。

 帝国主義の時代において、KKEはこの種の闘争を主導し、民族解放戦線(EAM)とギリシャ人民解放軍(ELAS)を、1941年から1944 年に掛けては外国(ドイツ、イタリア、ブルガリア)のファシスト占領に対するその他の抵抗諸組織を造り上げた。

 KKEは、この偉大な抵抗叙事詩の頭脳であり組織者であり、活力源であった。我々は、この闘争の最前線にいたわが党を誇りに思っており、我々が行う如何なる批判も、この偉大な闘争を労働者権力のための闘いに結びつけるためのわが党のイデオロギー的・政治的準備不足関係している。

 社会主義は、世界全体にとって、すべての資本主義諸国にとって、必要なもの、時宜にかなったものである。しかし、労働者人民の闘争が行われている諸条件の下で、どの国においても闘争に弾みつける重要な「連環」が生まれる。共産党と労働運動にとって、社会主義のための闘争、労働者人民の権力のための準備、結集、動員において、これらの「連環」を考慮に入れることが極めて重要な課題であり、今日のパレスチナにおける重要な「連環」は、イスラエルによる外国占領を放逐し、パレスチナ国家を樹立することである。

 従って、この「連環」を社会解放、労働者権力、新しい社会主義の建設を求める闘争の大義と結びつけるような路線を策定することが、パレスチナの労働者階級とその前衛である共産党の任務である。

 この闘争を支援し、今、占領軍との闘争のまっただ中にある彼らの側に立つことが、我々の任務であり、他の国々の労働者や若者の任務でもある。

「2つの枢軸」の歪んだ認識
 パレスチナ戦争は、地域内および国際的な帝国主義諸列強(一方は米国、NATO、EU、他方はロシア、中国、イランなど)間の競争と客観的に絡み合っているので、2つの異なる、しかし同様に誤った認識が生じる。

 最初の見解は、米帝国主義とその同盟諸国に対抗する「反帝国主義枢軸」(イラン-ロシア-中国)が形成されつつあり、それを支持すべきであるという見解。第2の見解 —— 現時点ではそれほど広まっていないが同様に誤りである —— は、双方の戦争は帝国主義的であり、帝国主義的な第三次世界大戦の異なる表現であるため、我々は解放を求めるパレスチナ人民の闘争を支持できない、とするものである。それは帝国主義紛争の一部だからだ。

 どちらのアプローチも、対立する諸勢力のブロックが形成されているという正しい観察に基づいている。一方に欧州・大西洋諸勢力の帝国主義ブロックがあり、他方にユーラシアブロック(ロシア、中国、イランなど)が明らかに形成されており、最初の見解は後者を「反帝国主義枢軸」などと誤って提示している。実際は、階級的アプローチは放棄され、帝国主義は米国とその同盟諸国の攻撃的な政策とみなされる。しかし中国とロシアでも独占体が広く支配しており、これらの国のブルジョア階級もまた、自分たち自身の計画推進に努めているという事実は無視されている。

 ロシア、中国、イランがパレスチナ人民への支持を表明しているのは、パレスチナ人民の大義を支持しているからではなく、この地域における米国の計画を妨害し、足かせをはめるためである。従って、これらの勢力は「反帝国主義枢軸」を構成しない。彼らの諸独占体は、彼ら自身の利益のために機能しており、彼らがパレスチナ闘争を一貫して支援することができないのはそのためである。他の民族解放運動や革命運動と同様に、パレスチナ人民がイスラエルの占領と闘う上で、これらの矛盾を利用しようと正当に努めていることは別の問題である。

 第二の見解は、関係する帝国主義ブロックの階級的本質に正しくアプローチしているものの、赤ん坊を風呂のお湯と一緒に捨てるという大きな間違いを犯し、帝国主義戦争の名の下でのパレスチナ人民の正義の闘争を拒否するという大きな誤りを犯している。しかし歴史が示しているように、国際的帝国主義的対立、さらには戦争の諸条件の下で、正当な民族解放戦争の勃発は排除されない。レーニンは、ルクセンブルク*28の誤った立場に対抗して、第一次世界大戦の状況下でこれらの問題を詳細に取り上げた。

 中東における衝突の一般化、さらにはウクライナ戦争との関連、あるいは新たな戦線の開放の現実的な可能性が実際に存在する今日、衝突の本質と、自分自身の地政学的目的のために争っている主要諸列強の帝国主義的本質を理由に、パレスチナ人民への支援を撤退すべきでない。それどころか、彼らの正義の闘いをさらに支援し続けなければならない。

 KKEは、ウクライナでの衝突の場合にも、パレスチナの場合にも、歴史の正しい側にいる。何故なら、KKEは人民と共にあり、人民の諸権利を剥奪する帝国主義者たち、諸独占体、そして人民の血を流し続けている資本主義と闘っているからである。

 

英語原文  露語原文

 

唯物論的歴史観

 

 

 

 

 

*1:Zionist Entityの訳語であるが、「このentityという用語は、軽蔑的に、または批判的な調子で使用されることがある。それは、イスラエルが単なる国ではなく、シオニズム運動の目標の現れであることを暗示している。批評家の中には、イスラエルの政策や行動に対する反対を強調するためにこの用語を使用する人もいる。(出処:Copilot)。」とのことで、Israeli Entityも同様の趣旨で使用されている。「シオニスト政体」、「イスラエル政体」と訳しているものもあるが、ここでは「シオニストなるもの」、「イスラエルなるもの」と訳した。

*2:国家としてのイスラエルに言及するときは、イスラエルを国家として承認していないので、「」を付けて「イスラエル」と表記していると思われる。

*3:バールーフ・カッペル・ゴールドシュテインは、アメリカ生まれのイスラエルの医師でテロリスト。オスロ合意直後の1994年2月25日、イスラエル占領下のパレスチナのイブラヒミモスクで乱射事件を起こし、29人のイスラーム教徒を殺害、125人を負傷させた(ヘブロン虐殺事件)。彼は、生き残りのイスラーム教徒たちによってその場で撲殺された。(出処:Wikipedia)

*4:フィリップ ワイスがニューヨーク オブザーバーのWebサイトに書いた一般向けのブログとして始まったニュースWebサイトである。このウェブサイトの目的は、中東におけるアメリカの外交政策を「進歩的なユダヤ人の視点」から取り上げることである。これは、アメリカの外交政策においてパレスチナ人に対するより公平な立場を促進し、アメリカのユダヤ人にシオニストのイデオロギーによって表現されるアイデンティティに代わるアイデンティティを提供することを目的としている。(出処:Copilot)

*5:イェディト・アハロノト紙は、イスラエルの大手ヘブライ語新聞。紙名はヘブライ語で「最近のニュース」という意味である。1970年代以降、イスラエル最大の発行部数を誇っている。
 ハアレツ紙の論調は中道左派で、労働党に近いとされる。全体的にはシオニズムに属しているが、一部の記事はパレスチナ側に立ったポスト・シオニストの観点もみられる。新聞名は「土地」を意味し、世界に流浪していたユダヤ人の間で故国イスラエルを指す言葉として用いられていた。(出処:Wikioedia)

*6:ハンニバル指令は、イスラエル国防軍(IDF)が用いている物議を醸している手順で、敵軍によるイスラエル兵士の捕虜を防ぐために使用される。この手順は、イスラエル軍が後に物議をかもした秘密の「ハンニバル指令」と呼ばれる作戦を実行した日に使用された。「ハンニバル指令」の下では軍は、捕らえられた兵士やその周辺の民間人への危険に配慮せずに集中砲火で攻撃することができるとされている。(出処:Copilot)

*7:普遍的管轄権とは、犯罪がどこで行われたか、また容疑者や被害者の国籍に関係なく、国際法に基づいて特定の犯罪を捜査し訴追する各国の司法制度の能力である。この原則は、人道に対する罪、戦争犯罪、大量虐殺、拷問などの国際法に反する重大な犯罪に適用される。普遍的管轄権は、そのような犯罪が国際社会または国際秩序そのものに損害を与え、各国がそれを守るために行動できるという原則に基づいている。(出処:Copilot)

*8:「事実を見ようとしない偏見」の部分の原文はblind biasであり、直訳すれば「盲目的偏見」となるが、「盲目的」という表現は差別的表現であるため、このように訳した。

*9:「エスニシティ」に合致する日本語が存在しないため、発音のカタカナ表記を用いた。『エスニシティ』は、「言語や,社会的価値観,信仰,宗教,食習慣,慣習などの文化的特性を共有する集団における,アイデンティティないし所属意識,さらに歴史を共有する意識をさす人類学用語。「民族性」と訳されることもある。」(ブリタニカ国際大百科事典)とある。「『エスニシティ』や『エスニック集団』の概念は,国民国家内部の分節を前提とする点で,より包括的概念である日本語の〈民族〉とは区別される。『エスニック』集団が相互に働き掛けることによって醸成されるところの、それぞれの集団の『アイデンティティ』」(百科事典マイペディア)という解説もある。

*10:原語はpeoplesnationsであり、単に「民族」と訳すことも可能だが、すぐ後でnationが用いられており、訳語として「民族国家」を採用した。

*11:原語はnationであり、「民族」と訳すこともできるが、「国家」の方を採用した。

*12:ハマースの正式名称はイスラーム抵抗運動(Ḥarakat al-Muqāwama al-Islāmīyaで、アラビア文字表記の語頭や途中に含まれる文字 を合わせて「ハマース」(Ḥamās) と通称される。(出処:Wikipedia)

*13:mujāhidīnは、アラビア語で「ジハード(聖戦)を遂行する者」を意味するムジャーヒドの複数形。一般的には、イスラーム教の大義に則りジハードに参加する戦士達(聖戦士)を指す。今日では、イスラーム教により連携した民兵や軍閥を指すことが多い。(出処:Wikipedia)

*14:第一次世界大戦中の1917年11月2日に、イギリスの外務大臣アーサー・バルフォアが、イギリスのユダヤ系貴族院議員であるロスチャイルド男爵に対して送った書簡で表明された、イギリス政府のシオニズム支持表明。バルフォア宣言では、イギリス政府の公式方針として、パレスチナにおけるユダヤ人の居住地(ナショナルホーム)の建設に賛意を示し、その支援を約束している。(出処:Wikipedia)

*15:ウンマ(Ummah)の語源はアラビア語で、コミュニティ(共同体)を意味している。イスラーム教の文脈では、ウンマは共通の歴史を持つ超国家的なコミュニティを表している、(出処:Microsoft Bing)

*16:ラス・アル・ナクラは、レバノン国境近くの町である。レバノンとイスラエルの国境は、双方に見解の相違があり、ナクラはこの係争地にある。

*17:ウンム・アル・ラシュラシュは、アカバ湾に面した港町である。

*18:「大惨事」は、パレスチナではナクバ(al-Nakbah)と言われている。1948年にイスラエルが建国された際に、パレスチナ人が蒙った「災厄」のことを指している。シオニストの民兵によって多くのパレスチナ人の村が破壊され、虐殺や追放が行われました。ナクバの結果、15,000人以上のパレスチナ人が死亡し、数百万人が難民となった。(出処:Microsoft Bing)

*19:「キブラ」という用語は、イスラーム教徒が毎日の儀式の祈り(サラート)の際に向かう方向を指す。具体的には、サウジアラビアのメッカにある神聖なモスクにある神聖な神殿であるカーバ神殿に向かう方向である。キブラに関する重要なポイントをいくつか紹する。
 キブラは、イスラーム教徒にとって祈りの方向を決定するため、極めて重要である。これは、世界中の信者が礼拝中に同じ方向を向いているため、世界的なイスラーム教徒コミュニティの団結を象徴している。当初、エルサレムは預言者ムハンマドによってキブラとして示された。しかし、後に神の導きに基づいて、これはメッカ(カーバ神殿のある場所)に変更された。(出処:Microsoft Bing)

*20:ムハンマドの名を挙げるときには、一般的に続けて、「アッラーの平安と祝福あれ!」というフレーズを付けるようである。

*21:「預言者ムハンマド(神の慈悲と祝福あれ)の、マッカ(メッカ)の聖モスクからエルサレムの最も遠いマスジドまでの一夜にしての旅は、神によって与えられた奇跡であった。それは驚異的な夜の幕開けであり、その夜に預言者ムハンマドは昇天し、神との接見を果たしたのである。」(出処:Wikipedia)とあるように、「ムハンマドの夜の旅」は、このことを指している。

*22:イスラーム教では、モーセに始まり、キリストも予言者の一人に数えられている。従ってキリストの名をあげるとき、「アッラーの平安と祝福あれ!」というフレーズを」付け加える。

*23:英語でcompanionと表記されているのは、イスラーム教(アラビア語)ではサハビ(aṣ-ṣaḥāba)と言ってムハンマドと特別な関係を持つ人々を指している。Microsoft Bingによると、「預言者のサハビとは、イスラーム教徒であり、ムハンマドを見たり会ったり、物理的に彼に臨場したムハンマドの弟子や追随者たち。」とある。

*24:露語版では、この部分はнаша партия никогда не позволитとなっていて、「わが党は如何なる時も・・・を許さない」という意味になる。

*25:ここは露語版とは表現がやや異なる。露語版は、「とりわけ彼らは、独自の目標を追求するイスラエルのブルジョワジーの存在、さらにはイスラエル人民の存在さえも認めていない。」となっている。

*26:ここも露語版とは表現がやや異なる。露語版は、в борьбе с буржуазными классами стран региона「地域の諸国のブルジョア諸階級との闘いにおいて」となっている。

*27:英語版ではanti-semitism(反セミティズム)の語が用いられており、露語版でも同様にантисемитизмの語が用いられている。反セミティズムは、「反セム族主義」という意味であり、本来はアラブ民族やユダヤ民族を含むセム族系民族に対するレイシズム(人種差別主義)を指す。従って厳密には反ユダヤ主義とは意味が異なるが、今日ではこの語が「反ユダヤ主義」と同義的に使用されている。

*28:ポーランド人のローザ・ルクセンブルクは、帝国主義の時代に虐げられたポーランドのような「弱小民族」は、資本主義国家の樹立に導く独立運動に反対し、社会主義革命をそれに対置した。従って資本主義国家であっても民族自決権を認めるレーニンと見解を異にした。ローザは1917年の10月革命にも反対し、ボリシェヴィズムを激しく批判したためにレーニンから厳しい批判を受けた。他方でローザは、右傾化するドイツ社会民主党内で左派を形成し、同党が祖国防衛主義に転落することに反対し続けた。最終的にはスパルタクス団の結成を経てドイツ共産党を結成し、第3インタナシュナルに合流する。そしてドイツ革命を追及する中、1919年1月15日、反革命武装組織「自由軍団(フライコア)」によって、リープクネッヒトゥと共に惨殺された。レーニンは、ローザの非ボリシェヴィズムを強く批判しつつも、その革命思想と革命実践を高く評価し、その死を深く惜しむと同時に、ドイツ反動派を満腔の怒りをもって糾弾した。