国際共産主義運動研究(1)

                大阪唯物論研究会会員 川 下 了

 2022年2月24日、ロシアがウクライナに対する特別軍事作戦を開始し、世界を震撼させました。しかしそのこと自体が、現代世界の歪んだ認識の表現でもありました。何故なら、独立主権国家に対する列国の軍事侵攻は、今に始まったことではないからです。2001年に始まって2021年まで20年以上も続いた米国によるアフガン戦争だけを取り上げるだけで十分でしょう。軍事的侵攻による独立主権国家イラクやリビアの政権転覆も然りです。しかしそれらに対して、欧米列強や日本を含む先進資本主義諸国ではパニックは起きませんでしたし、軍事侵攻した米国やNATO諸国に対する非難も一部に止まりました。結局、先進資本主義諸国(その多くは帝国主義国家であるのですが)が自分たちの言うことを聞かない発展途上諸国に対して行う軍事的侵攻は、当然とは言わないまでも黙認するが、先進資本主義諸国に対する軍事侵攻には反射的に身構えるという分けです。ウクライナ戦争は、資本主義世界体制の諸矛盾が、先進資本主義国間の戦争を引き起こすまでに深刻化していることを示しています。

 共産主義者は、帝国主義時代の戦争を資本主義の根本矛盾の爆発として捉え、戦争を根絶するためには資本主義体制を廃絶すること、すなわち世界の社会主義的改造を実現することだと考えてきました。ウクライナ戦争の勃発という緊迫した世界情勢の下で、昨年10月27~29日に、キューバの首都ハバナで、第22回共産党・労働者党国際会議(IMCWP)が開催されました。共産主義者はもとより、ウクライナ戦争の早期終結を願う人々は、この会議が如何なる合意文書を発表するか、期待と不安を持って見守りましたが、会議はウクライナ戦争について、国際共産主義運動の内部に鋭い意見の対立があることを公然化させました。

 国際共産主義運動は、ソ連と社会主義世界体制の崩壊以降、大きな困難と理論的混乱に陥っており、特に先進資本主義諸国においてその影響力を顕著に低下させてきました。この困難からの脱出は、理論的混乱を克服すること抜きには不可能であり、社会民主主義と明確に異なる社会主義への道を示すことが喫緊の課題であると確信しています。この観点から世界の共産党・労働者党の見解を研究することの重要性を強調すると同時に、その一翼を担うべく、世界の共産党・労働者党の理論と政策を調べ、順次紹介していく予定です。

【訳者前書き】
 『国際共産主義運動研究』の第1号は、既に発表した「第22回共産党・労働者党国際会議の諸文書」を加筆したものをお届けします。筆者はウクライナ戦争が始まって以来、世界の共産党・労働者党がこの戦争をどう評価しているかという情報を近しい人々の間で共有する作業を行ってきました。そして昨年10月末の第22回共産党・労働者党国際会議(IMCWP)の諸文書に触れることを通じて、世界の共産党・労働者党の理論と政策を研究することの今日的意義と必要性を強く意識するようになりました。それがこのこの『国際共産主義運動研究』を継続的に出すことにした理由です。既発表の文書では主要な2つの文書と3つの連帯決議を紹介していますが、今回は残りの2つの連帯決議をも紹介します。また個別に発言した51の党の見解も、今後できる限り多く紹介したいと思っています。

 第22回MCWPは2022年10月27~29日にキューバの首都ハバナで開催されました。会議には60カ国の78の共産党および労働者党の代表145人が参加したと報告されています。世界の共産主義者は、今日の緊迫した世界情勢の下で開かれたこの国際会議に重大な関心を寄せ、この会議が如何なる合意文書を発表するか、期待と不安を持って見守りました。

 国際会議は、最終日に「最終宣言」と「行動計画」を発表しました。この2つの主要文書と5つの連帯声明、51の共産党・労働者党の発言が、インターネット・サイト「SolidNet.org」に掲載されました。

http://solidnet.org/meetings-and-statements/imcwp/22nd-International-Meeting-of-Communist-Workers-Parties/

 5つの連帯声明の題名は、以下の通りです。
①    封鎖を非難し、キューバと連帯する決議
②    ウクライナ領土における帝国主義戦争についての決議
③    世界の覇権を求める米国帝国主義とNATO帝国主義に対する闘争は、進歩的諸勢力の核心的任務だ
④    キプロス人民との連帯声明 「キプロスの平和的再統一は、軍事化と帝国主義的侵略を抑制するための一段階」
⑤    ベネズエラの労働運動と、ベネズエラ人民およびベネズエラ共産党(PCV)との連帯

 これらの決議は、すべての党が署名したわけではありません。決議ごとに署名した党が異なっています。それぞれの決議に署名した党の数は次表の通りです。

 第22回MCWPの『最終決議』には、「大会には60カ国の78の共産党・労働者党が参加した」とありますが、①『キューバとの連帯決議』には“SolidNet Parties signing”として83の党が署名しており、”Other Parties”として3つの党が署名しています。共産党・労働者党以外の党も署名しているのか、分裂して複数ある党を1つと数えているのか詳細は不明です。

 今回のIMCWPは、ウクライナ戦争が長期化して停戦・交渉への見通しが立たないばかりか、第3次世界大戦や核兵器使用の危険が現実味を帯びる中で開かれたため、世界の共産党・労働者党がどのような決議を行うかがいつにも増して注目されました。しかし会議は、ウクライナ問題をめぐる鋭い意見の対立を露呈しました。ウクライナ問題についての相対立する2つの連帯決議がそれを物語っています。

 ②の決議は、ギリシャ共産党(KKE)が中心となって提出されたと思われる決議で、「我々は、世界資本の代表者たち、即ち、米国、帝国主義同盟とブロック、ロシア連邦、そしてウクライナ自体の支配層のあらゆる犯罪行為を非難する。」と述べ、この戦争のいずれの側をも支持してはならないとし、「帝国主義戦争を階級間の内戦に変える」必要があると主張しています。この決議には24の政党のみが署名しました。従来からKKEに近い見解を持った党が署名しています。

 他方、③の決議は、ロシア連邦共産党(КПРФ)が中心となって提出されたと思われる決議で、「共産党・労働者党は、ロシア軍に支援されたドンバスの勤労者の正当な反ファッショ闘争を支持する。」「ロシアはこのナチズムとの戦争に負けるわけにはいかない。」として、ロシアのウクライナへの軍事進攻を支持する内容となっています。この決議には23の党のみが署名しました。旧ソヴィエト連邦に属した諸国と東欧諸国の党が名を連ねています。欧米諸国の共産党ではドイツ共産党(DKP)が署名している点が目を引きます。
 ②の決議と③の決議とでは、ウクライナ戦争の評価がほぼ正反対になっています。参加した党の3割弱がそれぞれ②と③の決議を支持し、残りの半数近い党はいずれの決議にも署名しませんでした。このことは、今日の国際共産主義運動の混乱と困難を如実に物語っています。

 会議の最終文書と行動計画は、参加者たちの最大公約数的なもので、その内容は多義的に解釈できます。例えば、最終宣言の「人民の自決、独立、主権的平等、国家の内政不干渉原則の尊重を要求するとともに、人民が平和を享受し、自らの発展の道を選択する正当な権利を尊重するよう要求すること。」「帝国主義戦争および国際関係における武力による威嚇と行使を断固拒否し、平和のための闘争を推進すること。」といった文言は、素直に読めば「ロシアを名指しはしていないものの、ロシアをも批判している」と解釈できますが、「ロシアは批判の対象になっていない。」と解釈する余地を残しています。行動計画もまた然りで、その解釈に幅を持たせることによって採択に漕ぎつけたといえるでしょう。しかしウクライナ戦争のような重大な国際的・階級的衝突について、多義的で曖昧な決議を採択したことは、国際共産主義運動の権威と信頼を高めることにならないでしょう。

 この最終宣言と行動計画がどの程度の積極的意義を持っているかは、宣言と行動計画をじっくりと読み込んで主体的に判断する以外になく、また今後の実践がその意義を明らかにするでしょう。以下に、『最終宣言』、『行動計画』、5つの『連帯決議』の訳を掲載し、読者諸氏の検討に附したいと思います。原文は主として英語版を用い、必要に応じて露語版と西語版を参照しました。

 

第22回共産党・労働者党国際会議の『最終宣言』(訳文)

 キューバとすべての闘う諸国人民との連帯。団結した我々は、資本主義とその政策、そしてファシズムと戦争の脅威に立ち向かい、反帝闘争の中で、つまり社会運動と大衆運動と共に、平和、環境、労働者の権利、連帯、そして社会主義を擁護する中で、より強くなる。

1. 2022年10月27~29日にキューバのハバナで第22回共産党・労働者党国際会議が開催された。会議に参加した60カ国の78の共産党および労働者党の代表145人は、人類が直面する危機的状況について警告する。
2.  現在の帝国主義の支配は、不当で持続不可能な国際秩序を押し付け、搾取を強化し、労働者階級と人民の状況を悪化させ、紛争、対立、戦争の拡大を引き起こし、COVID-19などの地球規模の諸問題の解決を妨げている。一方社会主義諸国は、特に今日のキューバは、その公衆衛生システムと科学的発展によってこれらの地球規模の諸問題に歴史的かつ効果的に対処しており、それによって社会主義の優位性を明らかにしている。我々共産主義者は、人間による人間の搾取の廃止に、国家と人民の相互利益的関係に、平和と社会的ニーズを満たすための持続可能な開発に、社会正義と連帯に基づいた、新しい世界秩序を擁護する。
3.  帝国主義の攻撃性が高まり、進行中の地政学的再編成の結果として、我々は、軍拡競争の新たなエスカレーション、NATOの強化と拡大、新しい軍事同盟の出現、ウクライナでのような緊張と軍事紛争の悪化、世界各地でのファシズムの復活、「冷戦」、核戦争の脅威などに直面している。我々は、これらを拒否しなければならない。
4.  我々は、資本主義の略奪的な本性が、不平等の拡大、富の二極化、排除、移住の激流を作り出していることを非難する。それは食糧危機の激化と環境危機の悪化を引き起こし、我々は急速に「回帰不能」に近づいている。
5.  諸独占体と諸企業の利益を擁護するブルジョア政治体制は、自らの利益のために資本主義の体系的な危機を管理し、圧力と暴力を通じて労働者と人民の増大する社会的不満を制御しようと試みている。
6.  米国とその同盟諸国の力の漸進的衰退は、その内部危機の結果として、また競争相手に直面して、二重基準と脅迫的な封鎖政策と違法な強制措置の無差別な使用、軍事介入および国家の内政への干渉を強めた。帝国主義は、その利益に合致しない政府を崩壊させるための不安定化の道具として非定型戦争を、取り分けメディア関連の諸活動における破壊活動の膨大な武器庫を動員している。
7.  搾取の資本主義体制に対抗する世界の労働者階級の戦いは、まずもって共産主義運動と労働運動の団結を求める。その共産主義的運動と労働運動は、ブルジョア的・帝国主義的諸計画に対抗して、平和で正義ある社会的に公平な世界の建設を目的とする階級闘争を強化するために、社会運動、人民運動、農民運動、先住民運動と行動を共にする。

  • 労働者と人民の闘争を封じ込め、反帝勢力と革命勢力の団結と連帯を弱体化させようとする帝国主義の試みに直面して、ハバナでの第22回共産党・労働者党国際会議の参加者である共産党・労働者党は、以下のことに同意する。
    帝国主義との闘いを強化するための努力に合流すること。平和、持続可能な開発、社会正義および連帯に基づく国際秩序のために、資本家たちの利益が優先する現在の不当で非民主的な国際秩序の変革に貢献すること。社会主義社会を建設するための道を整えること。
  • 人民の自決、独立、主権の平等、国家の内政不干渉の諸原則の遵守を要求するとともに、人民が平和を享受し、自らの発展の道を選択する正当な権利を尊重するよう要求すること。
  • 帝国主義戦争および国際関係における武力による威嚇と行使を断固拒否し、平和のための闘争を推進すること。
  • ブルジョア階級に対抗し、人民の共通の利益を守るために、国際主義的行動と連帯を強化すること。
  • 軍拡競争とそれによって引き起こされた社会的支出の大幅な削減、核兵器の存在と近代化、外国の軍事基地を非難し拒否するために、大衆を動員すること。NATOおよびそれの全地球的軍事組織への拡張計画に反対すること。
  • 世界の様々な場所における反共産主義、反動、超国家主義、ファシスト勢力の再出現 —— それらは、暴力、外国人排斥、人種差別を、また政治的、イデオロギー的、社会的、民族的、宗教的、ジェンダー的不寛容を激化させ、民族差別を助長する —— に反対して闘うこと。
  • 帝国主義の干渉と侵略に抵抗し、政府と人民に対する圧力と恐喝の手段としての封鎖と制裁、一方的な強制措置、二重基準の諸政策を拒否している諸国人民との連帯を強化すること。
  • 資本主義体制の不正義を正当化し、社会主義と共産主義を失墜させ、それぞれの国の我々の文化的独自性を侵食または破壊することを目的とした帝国主義のイデオロギー的、文化的、象徴的攻撃(注1)に立ち向かうために、マルクス主義とレーニン主義を擁護し普及させること。
  • 正義と解放の事業のためのすべての人民闘争を倍加し、労働者、農民、先住民族、若者、女性の諸団体との連帯を強め、彼らの権利を擁護し、資本主義に反対すること。難民や戦争の犠牲者の側に立つこと。
  • 環境を破壊し、生態系と人類の存続を危険にさらす資本家の利益に基づく開発モデルを非難し、それとの闘いを強化すること。
  • 国際共産主義運動と国際労働者運動 —— それは、帝国主義の支配に反対し、労働者と人民の諸利益を守るための、また資本主義の転覆と社会主義の建設のための革命的な変革のための諸闘争を強化することを目指す社会運動と人民運動と共にある —— の団結を強化するための第22回会議で承認された行動計画を実行すること。

 社会的、大衆的、民主的な諸組織、諸勢力、諸運動、また女性の権利の解放を擁護する人々と共にする労働者階級の前衛の調整された努力によって、我々は、支配的で破壊的で未来のない世界体制である資本主義を打倒し、真に革命的な変革を実現するすることができる。

 我々は、キューバ人民の正当な大義と、彼らが60年以上に渡って受けてきた不当で犯罪的で強化された経済・商業・金融封鎖を即時かつ無条件で解除するための彼らの闘争に対する連帯と支持を再確認し、米国政府が偽のテロ支援国家リストからキューバを削除することを要求する。
 我々は、第22回共産党・労働者党国際会議の組織化への貢献と参加者への温かい歓迎に対して、キューバ共産党、その革命政府、およびその人民に感謝する。

 我々は、キューバ革命の歴史的指導者であるフィデル・カストロ・ルスの遺産に敬意を表明する。彼は、ラウル・カストロ・ルス元帥の教えと、共産党中央委員会第1書記でありキューバ共和国大統領であるミゲル・ディアス・カネル・ベルムデスによって率いられた後継世代と共にあり、社会主義的で独立した連帯社会の建設に向けた道程において、真の決定的な解放を求める人々の闘いに絶え間ない励ましを与えている。

帝国主義と資本主義との戦いで団結しよう!
社会主義万歳!

ハバナ、2022年10月29日

〔訳者注〕―――――――――――
(注1)社会集団間あるいは国家間の力の差に現れる一種の非身体的攻撃を意味する。

http://solidnet.org/article/22nd-IMCWP-Final-Declaration-of-the-22nd-International-Meeting-of-Communist-and-Workers-Parties/

 

第22回共産党・労働者党国際会議の『行動計画』(訳文)

1.  2022年10月27~29日に、キューバのハバナで開催された第22回共産党・労働者党国際会議では、次回会議までに展開されるべき以下の主要なガイドラインと諸行動を決定した(注2)。

  • 平和を守るために、帝国主義戦争、好戦的介入、核兵器およびその他の大量破壊兵器、外国の軍事基地を拒否するために動員すること、同様にNATOやAUKUSのような他の帝国主義同盟に反対して動員すること。
  • 戦争を非難する世界的な大規模動員によって9月21日の国際反戦デーを祝うこと。
  • 世界平和評議会の成功を確保すること。

2.  対話と交渉を通じて、ウクライナの紛争を真剣に、建設的に、現実主義的に解決するよう呼びかけること。

  • 若者の積極的な政治参加を促し、我々が擁護する諸理念と諸原則の継続性を確保すること。
  • 国際共産主義運動と国際労働運動の歴史的記憶を保存し、新しい世代に伝えること。
  • 8月12日の国際青年デーを祝うこと。
  • 11月17日の国際学生デーを祝うこと。

3.  マルクス主義、レーニン主義の理論的および実践的概念と、人民の正当な要求と正当な権利に応える唯一の体制としての社会主義の価値観の交流、分析、普及に資する対面およびオンラインのワークショップとセミナーを組織すること。この目的のために、以下の活動や記念行事が考えられる。

  • ソヴィエト連邦建国100周年。
  • カール マルクスの没後140周年(1883年3月14日)。
  • 共産党宣言の発刊175周年(1848年2月21日)。
  •  キューバで開催される左翼政党と左翼運動の理論出版物第1回国際会議(2023年2月10~12日)。

4.  ソヴィエト連邦建国100周年とサルバドール・アジェンデ人民連合政権に対するファシスト・クーデターから50周年という文脈において、反共産主義とファシズムを、同じくソヴィエト連邦邦と社会主義の歴史的貢献についての虚偽報道を非難すること。

5.  諸国人民の正当な諸事業(注3)に、政治的権利の自由な行使に対する迫害と禁止に直面している共産主義者たちに連帯を表明すること。独裁体制に、民主的諸権利と諸自由の抑圧と差別に反対すること。

6.  労働者階級と農民階級の、また女性たちと移民たちの団結権およびより良い賃金と労働条件を、そして民主的諸権利を正当に要求する闘争に連帯し支援する国際キャンペーンを実施すること。3月8日の国際女性デーと5月1日の国際労働者デーにおける動員を強化すること。

7.  帝国主義的な文化的新植民地化計画に直面して、人民の文化と独自性を擁護する諸活動を遂行すること。

8.  環境への配慮と保護を要求する大衆運動に積極的に参加し、生産と消費の資本主義モデルを拒否すること。

9.  外国の占領、封鎖、制裁、帝国主義的侵略と闘っているすべての人々との連帯を表明すること。

10.  米国によって課せられた経済、商業、金融の強化された封鎖を即時かつ無条件に解除させるために、『キューバ人民に連帯する日々』に参加すること。『テロ支援国家』リストに、恣意的かつ一方的にキューバを含めること、またその内政への干渉及びその憲法秩序を転覆しようとする試みに反対すること。

  •  毎月、最後の週末に開催される『キューバと連帯する世界デー』に、共産党・労働者党国際会議(IMCWP)(注4)のメンバーである諸党が、より多く、より積極的に参加するよう努めること。

11.  闘争のさなかにあるパレスチナ人民との連帯を強化すること。イスラエルによる占領の即時終了を、また自由な意思決定を行い東エルサレムを首都とする独立した主権国家を持つパレスチナ人民の権利を、そしてまたそれに関連する国連諸決議に基づく難民の帰還権を、可能な限りの手段を用いて要求すること。いわゆる『世紀の取引』と、占領されたパレスチナ領土での入植地建設・拡大を含む植民地化とアパルトヘイトの実施に関する米国とイスラエルの犯罪的諸政策を非難すること。

  • 11月29日のパレスチナ人民国際連帯デーに向けて、国際キャンペーンを開始すること。

12.  国連の枠組みの中で、また国際法の諸規則を遵守し、西サハラ問題(注5)に対する公正かつ永続的な解決を要求するとともに、いまだに解決されていない紛争の平和的かつ交渉による解決を求めること。

  • ポリサリオ戦線(注6)の創設日である5月10日に、正当な権利を行使するためのサハラ人民の闘争に連帯して総動員を行うこと。

13.  米帝と欧州帝国主義によって違法に押し付けられた侵略と制裁に直面しているベネズエラ・ボリバル共和国との連帯を促進すること。

  • 違法な強制諸措置の即時解除と、帝国主義諸勢力によって横領されたベネズエラに所有権がある資産の返還を要求する諸活動を遂行すること。

14.  プエルトリコ人民の自決と独立に対する不可侵の権利を支持すること。

  • 米国の植民地主義に反対する最初の武力蜂起を記念して、毎年10月30日に祝われるプエルトリコ連帯国際デーを支持すること。

15.  以下の歴史的出来事を祝うために、ラテンアメリカ・カリブ海地域の共産党・労働者党国際会議(IMCWP)参加政党が実施する行動と活動を支援すること。

  • 中米諸国の独立200周年。
  • キューバの国民的英雄ホセ マルティ生誕170周年。
  • モンカダ兵舎とカルロス・マヌエル・デ・セスペデス(注7)兵舎への攻撃から70周年。

16.  モンロー・ドクトリン(注7)の宣言200周年と米国のグレナダ侵攻(注8)40周年に関連して、ラテンアメリカ・カリブ海諸国に対する帝国主義的干渉を非難すること。

17.  反帝国主義の国際組織、特に世界労働組合連盟(WFTU)、世界平和評議会(WPC)、世界民主青年連盟(WFDY)、女性国際民主連盟(WIDF)のより良い統合と強化を達成することを目指して、共産党・労働者党およびそれらの関連する社会的諸組織による更に大きな行動を実現すること。

18.  第23回IMCWPをトルコで成功裏に祝うために、世界のすべての地域の共産党・労働者党間の団結、交流、協力を強化すること。

ハバナ、2022年10月29日

〔訳者注〕―――――――――――
(注2)英語版ではdefined the following main guidelines and actions to be developed ahead of the next Meetingとあるが、露語版ではопределила основные направления и действия, которые должны быть разработаны до следующей Встречи(次回会合までに練り上げられるべき主要な方向性と主要な諸行動を決定した。)、スペイン語版ではdefinió como ejes y acciones principales a desarrollar hasta el próximo Encuentro las siguientes(次の会合までに展開されるべき主軸と主要行動として、以下の事柄を決定した。)となっている。

(注3)英語版はcauses(諸原因/諸目標/諸理想)、スペイン語版はcausas(諸原因/諸目標/諸理想)、露語版はделами(諸事業/諸問題/諸事件)

(注4)英語版ではInternational Meeting of Communist and Workers' Partiesで、略称はIMCWPであるが、スペイン語ではEncuentro Internacional de Partidos Comunistas y Obrerosで、略称はEIPCOである。露語ではМеждународная встреча коммунистических и рабочих партийで、略称はМВКРПとなる。

(注5)アフリカ大陸の西端に位置する西サハラを巡り、自国領であると主張し、全土の7割程度を実行支配するモロッコと、国土の3割程度を実行支配する独立主権国家サハラ・アラブ民主共和国との間の係争問題を指す。「ポリサリオ戦線」が指導するサハラ・アラブ民主共和国は、社会主義諸国やアフリカ諸国に承認されているが、西欧諸国や日本は承認していない。2020年12月、米国はモロッコがイスラエルとの国交を回復したことを理由に、モロッコの西サハラ領有権を認めた。

(注6)カルロス・マヌエル・デ・セスペデス(Carlos Manuel de Céspedes)は、第1次キューバ独立戦争(1868~1878年)の英雄で、1869年4月にキューバ共和国初代大統領に選出され、キューバの国父とも呼ばれている。

(注7)アメリカ第5代大統領ジェームズ・モンローによって1823年になされた宣言。南北アメリカ大陸は米国の支配圏であり、欧州諸国の手出しは許さないとするもの。親米ブルジョアジーは、これを欧州列強とロシアから南北アメリカの主権を守った宣言のように述べているが、実際は米国の植民地支配を宣言したものである。

(注8)1983年にカリブ海の小国グレナダに米軍が侵攻し、左翼政権を打倒した。

http://solidnet.org/article/22nd-IMCWP-Plan-of-Action-of-the-22nd-International-Meeting-of-Communist-and-Workers-Parties-Havana-Cuba/ 

『最終宣言』と『行動綱領』についての訳者コメント

 宣言はその最初の部分で、今日の状況が『人類生存の危機』であり、「人類が直面する危機的状況について警告する」として、その危機の根本原因が帝国主義世界体制にあることを指摘し、「帝国主義の支配は、不当で持続不可能な国際秩序を押し付け、搾取を激化させ、労働者階級と人民の状況を悪化させ、紛争、対立、戦争の拡大を引き起こし、COVID-19などの地球規模の問題の解決を妨げている。」と述べています。そして帝国主義世界体制に代わるものとして、「共産主義者は、人間による人間の搾取の廃止に、国家と人民の相互利益的関係に、平和と社会的ニーズを満たすための持続可能な開発に、社会正義と連帯に基づいた、新しい世界秩序を擁護する」という自らの立場を宣言しています。

 この部分は、帝国主義支配体制が『人類の生存』を脅かす事態に至ったとして、『新しい世界秩序』を確立する必要性を訴える宣言の最重要部分です。しかしながらこの部分で、国際共産主義運動が本来語らなければならないことが語られていません。それは、『新しい世界秩序』の内容とその確立への道筋です。宣言は、一方で「人間による人間の搾取の廃止」を、即ち社会主義革命の必要性を訴えつつ、他方で「国家と人民の相互利益的関係」や「平和と社会的ニーズを満たすための持続可能な開発」や「社会正義と連帯に基づいた、新しい世界秩序」を求めています。後者は、社会主義革命と如何なる関係にあるのでしょうか。

 帝国主義の打倒、即ち社会主義世界革命以前において追求されるべきものであるのか、それとも社会主義世界革命の実現によって獲得されるものであるのか。前者の場合、『人類の滅亡』を防ぎ、露骨極まりない搾取に反撃するためには、社会主義世界革命が実現する前に、社会主義に賛成していない人民を含む広範な反帝反独占の統一戦線を結成して、帝国主義の最も反動的で好戦的な部分を孤立させ、政権から排除することが当面の共産主義者の課題になります。またその場合、その闘いを如何にして社会主義革命に結び付けるかも同時に問題としなければなりません。後者の場合は、『人類の生存』を脅かす帝国主義の打倒抜きに「平和」も「新しい世界秩序」も不可能であり、社会主義革命を喫緊の課題とすることになります。その場合は、社会主義革命のための主体的条件の圧倒的未成熟を克服する道が示されなければなりません。『最終宣言』は、この問題に対する回答を回避しいます。この点にこそ、国際共産主義運動の真の困難が凝縮されていると訳者は考えています。

 宣言はウクライナ戦争について、ロシアの軍事進攻について触れることを回避しつつ、「人民の自決、独立、主権的平等、国家の内政不干渉原則の尊重を要求するとともに、人民が平和を享受し、自らの発展の道を選択する正当な権利を尊重するよう要求する」、「帝国主義戦争および国際関係における武力による威嚇と行使を断固拒否し、平和のための闘争を推進する」との立場を表明しました。この表現は普通に読めば、米国とNATOに対する非難であると同時に、ロシアのウクライナへの軍事侵攻とウクライナ領土の一部のロシアへの編入を非難していると解釈できますが、ロシアを名指していないため、ロシアは批判されていないと解釈する余地を残してもいます。しかし前書きでも述べたように、ウクライナ戦争のような重大な国際的・階級的衝突について、多義的で曖昧な決議を採択したことは、国際共産主義運動の危機と困難を露呈させたともいえるでしょう。

 宣言は、以上のような深刻な問題を内包してはいますが、国際共産主義運動の優先的任務として、「平和、持続可能な開発、社会正義および連帯に基づく国際秩序のために、資本家たちの利益が優先する現在の不当で非民主的な国際秩序の変革に貢献すること」を同意事項の最初に位置付け、新冷戦構造の構築に反対して新しい国際関係を築くことの重要性を強調しています。このことの正当性と意義は揺るぎないものです。20世紀の中頃、東西冷戦が著しく激化し、人類の生存を脅かすベルリン危機とキューバ危機を目前にして、世界の81カ国の共産党・労働者党が声明を発表し、人類の滅亡を回避するためには東西の『平和共存』が唯一の方法であると宣言しました。もちろん当時と今日では、『人類生存の危機』の内容も変化しているし、何よりも資本主義体制と社会主義体制の対立に起因する冷戦と、帝国主義間対立および欧米帝国主義による社会主義諸国や発展途上諸国、新興帝国諸国を従属させようとすることに起因する冷戦との違いがあります。

 この違いは極めて大きいのですが、それでも『81カ国共産党・労働者党声明』の時代との類似性もまた見逃すべきではありません。当時もソヴィエト連邦共産党と中国共産党の間の理論的・実践的対立は極めて深刻なものでした。私たちは、そのことを含めて今回の宣言に向き合う必要があるでしょう。

 なお、『最終宣言』並びに『行動計画』に署名した党の一覧は、“SolidNet”に掲載されていませんが、『キューバとの連帯決議』に署名した党は分かっているので、それらの党名を以下に紹介して置きます。これらの党は、『最終宣言』並びに『行動計画』にも署名したものと考えて差し支えないと思います。なお『社会主義国の党』として参加したのは、キューバ、中国、ベトナム、ラオス、朝鮮の5つの党でした。また1つの国から複数の共産党・労働者党が参加した国も少なからずありました。ここにも共産主義運動の混乱した状況が現れています。

■『最終決議』および『行動計画』に署名した党

 ところで、上表の党名で、同じ名前あるいは極めて似た名前の党が複数名を連ねています。これはそのほとんどが党の分裂によるのものです。正式名称が分かるものを以下に表示しておきます。

 

封鎖を非難し、キューバと連帯する決議(訳文)

 2022年10月にハバナで開催された共産党・労働者党第22回国際会議に出席する以下の代表団は、次のように表明する。

 米国政府によるキューバに対する不当で違法かつ非人道的な封鎖を強く非難し、その即時かつ無条件の終了を再度要求する。

 我々は、封鎖を非難しその解除を求める多数の国連総会決議を、米国政府が遵守することを要求するよう、国際社会に要請する。

 封鎖は、キューバ国民の人権に対する目に余る、大規模かつ組織的な侵害であり、国の発展にとって大きな障害となっている。

 我々は、金融的窒息と商業的包囲を強化することを目的とした、ドナルド・トランプ政権時代に採用された243の措置を含む、この犯罪政策の強化を拒否する。

我々は、キューバ人民がCovid-19パンデミックの影響に直面していた時でさえ、これらの諸措置をご都合主義的に適用したことを断固として非難する。それ故に封鎖は、キューバ人民に対して犯された真の「人道に対する罪」となった。

 我々はまた、類例のない戦争諸手段や転覆活動やキューバの英雄的人民とその政府に反対するメディア・キャンペーンを用いて、キューバの国内情勢を不安定化させようとする試みを非難する。

 我々は、キューバの主権と独立を保持し、社会主義を建設するという決定を堅持しているキューバ人民と革命政府とキューバ共産党に対する我々の確固たる連帯と関与を、書面をもって確認する。

キューバは一人ではない。
封鎖を打破しよう!
社会主義キューバ万歳!

Solidnet | 22nd IMCWP, Resolution to Condemn the Blockade and to Stand in Solidarity with Cuba

 この決議についての訳者コメント

 このキューバ連帯決議は極めて簡潔であり、米国のキューバ封鎖に的を絞っています。そして帝国主義世界の巨頭である米国の鼻先で、主権と独立を守り社会主義を堅持して苦闘するキューバに対する限りない尊敬と連帯を表しています。この特別決議には、会議に参加したすべての党が署名しています。

 

ウクライナ領土での帝国主義戦争に関する決議(訳文)

 我々は、2022年10月27日から29日にハバナで開催された第22回共産党・労働者党国際会議の参加者は、地球規模でのプロレタリアートの闘争と、また同じくドンバスのプロレタリアの反ファッショ闘争と帝国主義の軍国主義政策に対するウクライナとロシアの労働者の抵抗に対する、我々の強い責務と、長年の英雄的闘争への支持を再確認する。

1. 我々は、世界資本の代表者たち、即ち、米国、帝国主義同盟とブロック、ロシア連邦、そしてウクライナ自体の支配層のあらゆる犯罪行為を非難する。彼らは、ウクライナの領土において、帝国主義時代の彼らの諸矛盾を解決するための最後的手段である戦争を行使して今に至っている。現時点において、これらの諸矛盾は非常に深刻なため、この戦争がいつまで続くかを予測することは不可能に見える。

2. 我々は、搾取階級に対する被搾取階級の闘争として、ウクライナとロシア連邦内での反軍国主義的感情と行動を支持する。マルクス主義的分析の論理だけでなく、進行中の8か月の戦争は、ロシア政府によって宣言された諸目的の虚偽を示している。何故なら、この戦争は明らかに、それらの諸目的と正反対の結果に導いているからである。即ち、人道的大惨事、数千の市民の死、鉱工業諸施設と諸都市の破壊と並行して進むウクライナの軍国主義化、反ロシア感情の高まり、ファシスト武装者数の増加である。このように、歴史における過去と同様に、両国の支配者エリートたちは、彼らの政治的得点や経済的利益、そして騙された人々をその人たちにとって何の関係もない諸目的の達成に動員するために、「正義の戦争」というスローガンを操っている。

3. 我々は、ロシア政府の政策が反ファッショ運動、ましてや「親ソビエト」感情と何らかの関係があるとする考えを断固拒否する。ブルジョア国家であるロシア連邦は、名目上ブルジョア法の枠組みの中でソヴィエト連邦邦の継承者であるに過ぎず、その土台にも上部構造にもソヴィエト連邦邦との共通点は何もない。ロシア連邦の「独立」から30年間に、金融資本と独占資本が創出された。産業、教育、医療部門は組織的に破壊された。失業者が増加し、貧富の差が拡大し、労働者の権利と民主的自由は失われた。

 ロシア連邦のブルジョア支配サークルの代理人がルガンスク人民共和国とドネツク人民共和国において権力を掌握し、人民が指名した赤色野戦司令官たちが排除され、共産主義組織の政治活動は禁止されている。「特殊軍事作戦」に関してプーチンとロシア連邦の公式当局が述べたすべての目的は達成されなかった。この「特殊作戦」は偽りであるだけでなく、ウクライナの民間人にもたらしている人道的大惨事によって確認された犯罪である。

4. 我々は、ウクライナの軍事化、極度に反動的な民族主義イデオロギーの促進、民族間の憎悪の扇動、民族主義的好戦的グループの創設を強く非難する。戦闘地域からの民間人の避難は、本来人民自身によって行われるべきである。労働者の権利と言論の自由は大幅に制限されている。政敵に対する迫害と弾圧は途絶えることがない。

5. 帝国主義的虐殺を止めることができるのは、ロシアのプロレタリアートと団結し、世界の労働者に支えられるウクライナの労働者階級だけであると我々は確信している。ウクライナ、ロシア、そして世界のブルジョアジーが、労働者を動員し武装させている。

 これらの武装は、諸人民間の帝国主義戦争を階級間の内戦に変えるために、戦争諸政府に向けられることが必要である。このことだけが、労働者階級が戦争の原因としての帝国主義に終止符を打ち、労働者権力の諸機関を形成し、同じく戦争国家を勤労人民の利益になるように変革することを可能にする。

 全世界の共産主義者にとって、ブルジョア諸国の政府に後れを取ったり、ブルジョア諸国のいずれかのブロックを支援したり、あるいは自国の民族ブルジョアジーの利益のために働くことは、恥ずべきことであり犯罪である。我々の不変的任務は、全世界の労働者が、帝国主義戦争は労働の解放につながらないこと、逆に労働をさらに奴隷化することを認識するのを助けることである。帝国主義紛争において、労働者階級は支配者たちの諸サークルの内に同盟者を持たないし敵だけであること、国籍が何であるかに関係なく彼らの友人はただプロレタリアであることを認識するのを助けることである。

 共産主義者の任務は、国内的にも国際的にも、資本主義そのものを終わらせることである。資本主義を終わらせることは、戦争を終わらせることである。この崇高な大義のため、万国の共産主義者は自己の労働者階級と団結せよ!

http://solidnet.org/article/22nd-IMCWP-RESOLUTION-on-the-imperialist-war-on-the-territory-of-Ukraine/

この決議についての訳者コメント

 この決議文は、前書きで書いたようにギリシャ共産党(KKE)が中心となって作成されたと推定されます。決議文は、「我々は、世界資本の代表者たち、即ち、米国、帝国主義同盟とブロック、ロシア連邦、そしてウクライナ自体の支配層のあらゆる犯罪行為を非難する。」と述べ、ウクライナにおける戦争が資本家たちの間の戦争であり、共産主義者とプロレタリアートは、この戦争に反対し、いずれの側をも支持してはならないと主張します。またロシアのウクライナへの軍事進行を反ファッショ闘争として支持するロシア連邦共産党などを意識して、「ロシア政府の政策が反ファッショ運動、ましてや『親ソヴィエト』感情と何らかの関係があるとする考えを断固拒否する。」と述べています。

 そして、「ウクライナとロシア連邦内での反軍国主義的感情と行動を支持する。」とし、「帝国主義的虐殺を止めることができるのは、ロシアのプロレタリアートと団結し、世界の労働者に支えられるウクライナの労働者階級だけである」と結論しています。

 この決議で注目すべきことの一つは、ドンバス地域の情勢に触れて、「ロシア連邦のブルジョア支配サークルの代理人がルガンスク人民共和国とドネツク人民共和国において権力を掌握し、人民が指名した赤色野戦司令官たちが排除され、共産主義組織の政治活動は禁止されている」と評価していることです。この認識に基づいて、ドンバス地域で戦っている部分の階級規定を行い、この地域の現在の権力掌握者ではない、人民に支持された赤色野戦司令官たちを含む「ドンバスのプロレタリアの反ファッショ闘争」を支持すると述べています。これはロシア連邦共産党(КПРФ)などがKKEに対して「ドンバス人民の闘いを否定している」と批判していることへの反論といえます。訳者は、この点ではKKEの主張が正しいと考えていますが、同時に、この決議には大きな欠点・誤りがあると考えています。

 決議は、「ウクライナ、ロシア、そして世界のブルジョアジーが、労働者を動員し武装させている」「これらの武装は、諸人民間の帝国主義戦争を階級間の内戦に変えるために、戦争諸政府に向けられることが必要である。このことだけが、労働者階級が戦争の原因としての帝国主義に終止符を打ち、労働者権力の諸機関を形成し、同じく戦争国家を勤労人民の利益になるように変革することを可能にする。」。すなわち、文字通り『帝国主義戦争を内乱へ』を主張しているわけです。

 しかし今日、帝国主義戦争を内乱へ転化できる条件はロシアにも、ウクライナにもありません。ましてや米国を始めとする西側帝国主義諸国には存在しません。そのような状況下で、『帝国主義戦争を内乱へ』というスローガンを持ち出すことは、ウクライナ戦争の即時停止と外交交渉による解決という喫緊の課題に何の役にも立たないばかりか、広範は反戦闘争の障害にすらなりかねません。共産主義者の喫緊の任務は、広範な反戦・反帝闘争を組織することによって、戦争を遂行している政府を打倒すること、つまり支配者階級の最も反動的で好戦的な部分を政治権力の座から追放することです。従って訳者は、この決議に賛成することはできません。この決議に署名した党は、以下の通りです。

■この決議に署名した党

 

決議『世界覇権を求める米国とNATO帝国主義に対する闘争は、進歩諸勢力の主要任務である』(訳文)

 2022年10月28~29日に、ハバナで開催された第22回国際共産党・労働者党会議の参加者たちによる声明。

 世界の人民は、資本主義の全般的危機の急速な先鋭化を目の当たりにしている。増大する諸矛盾に対処できずに、帝国主義は人類にとってますます危険になりつつある。挑発と戦争に訴えることが、ますます多くなっている。その諸行動は、新たな世界戦争と核兵器使用の脅威をもたらしている。

 実際、諸階級の、諸民族の、または諸国家の武力闘争としてのこの戦争は、キエフのナチスがドンバスの住民に対して懲罰的な作戦を開始した2014年以来遂行されてきた。ヒトラーのナチズムの同調者たちを英雄と認めることを拒否したり、ソヴィエトの記念碑の破壊や自分たちとロシアとの結びつきの切断を拒否したり、そして自分たちの生来のロシア語を話すことを欲したために、人民が殺され続けてきた。

 今日、米国主導のNATOによって組織され指揮されている50以上の略奪国家が、ヒトラーの同盟者であるバンデーラ(注9)派に追随するウクライナ人を利用して、ロシアに対するファッショ的膨張政策を追求している。傭兵の人的資源を含む世界資本の政治的・財政的・経済的・軍事的諸資源の組み合わせが、ロシアの抑圧と解体に注ぎ込まれてきた。その目標は、大資本の特徴であるが、競争を排除し、シェアーを再分割することである。とりわけ欧州において。その目的は、ファシズムを積極的かつ公然と利用して、21世紀に米国の世界覇権を確立することである。

 共産党・労働者党は、ロシア軍に支援されたドンバスの勤労者の正当な反ファッショ闘争を支持する。我々は、外交政策においてファッショ的方法を用い、NATOの直接参加を得て、操り人形であるブルジョア民族主義のウクライナ政権の手でロシアを打ち負かすことを目的とする戦争を遂行している米帝国主義に反対する。

 我々は、ロシアがユーゴスラビアやイラクあるいはリビアの運命をたどること —— それは世界の労働運動の利益と根本的に対立する —— を防ぐために、できる限りのことを行うことを宣言する。反動は、その新秩序を強固に、そして長期的に確立しようとしている。ロシアはこのナチズムとの戦争に負けるわけにはいかない。

 我々は、すべてのEUおよびNATO加盟国におけるファシズム、反ソヴィエト主義、およびロシア嫌悪の政策に対して断固たる抗議を表明する。我々は、米国とNATOがウクライナのナチスの手でロシアに対して解き放った侵略に抗議する。我々は、共産主義者との、ウクライナとロシアのすべての労働者との断固たる連帯を表明する。我々は復活した褐色ペスト(注10)と断固・積極的に闘う決意を宣言する。

 共産主義者の立場は不変である。ファシズムと世界核戦争の脅威に終止符を打つことができるのは、資本主義に終止符を打つことだけである。

 我々はこの闘いに、我々の活動と人生を捧げる。

 万国の労働者よ、団結せよ!

2022年10月28~29日、キューバ、ハバナ

〔訳者注〕―――――――――――
(注9)ステパーン・アンドリーヨヴィチ・バンデーラ(ウクライナ語: Степан Андрійович Бандера, 1909年1月1日~1959年10月15日)はウクライナの民族主義者で、ポーランドの支配下にあった西ウクライナで独立運動に加わったが、ナチスの思想に共鳴し、一時は公然とナチスと協力関係に入り、反ソ的立場を鮮明にした。しかし1941年にウクライナのドイツからの独立を画策して逮捕され、ドイツ敗戦まで入獄。2015年の親ロ派政権が倒されて以降、バンデーラの再評価が推し進められ、「ウクライナ解放の英雄」として宣伝・教育されるようになった。しかしバンデーラの親ナチス・反ユダヤ主義は、ロシアだけでなく、欧州諸国やイスラエルの反発もあり、ゼレンスキー政権のアキレス腱ともなっている。

(注10)「褐色ペスト」はナチズムを指す。フランスの歴史家ダニエル・ゲラン(Daniel Guérin, 1904年5月19日~1988年5月14日)が1972年に上梓したナチス支配下のドイツ社会を描いた書物の題名「褐色のペスト ―— ドイツ・ファシズム=ルポルタージュ」に由来する。

http://solidnet.org/article/22nd-IMCWP-The-Struggle-Against-USA-and-NATO-Imperialism-which-Seek-World-Hegemony-is-the-Key-Task-of-the-Progressive-Forces/ 

この決議についての訳者コメント

 この決議文も前書きで書いたようにロシア連邦共産党(КПРФ)が中心となって作成されたと思われます。

 決議文は、「この戦争は、キエフのナチスがドンバスの住民に対して懲罰的な作戦を開始した2014年以来遂行されてきた。」「自分たちとロシアとの結びつきの切断を拒否したり、そして自分たちの生来のロシア語を話すことを欲したりしために、人民が殺され続けてきた。」とし、従って「共産党・労働者党は、ロシア軍に支援されたドンバスの勤労者の正当な反ファッショ闘争を支持する。」との立場を表明しています。つまりロシアのウクライナへの特別軍事作戦は、ドンバス人民を助ける正義の戦争だと判断しているのです。

 また、「傭兵の人的資源を含む世界資本の政治的・財政的・経済的・軍事的諸資源の組み合わせが、ロシアの抑圧と解体に注ぎ込まれてきた。」とし、この戦争はそれに対するロシアの正当防衛の戦争でもあり、「ロシアはこのナチズムとの戦争に負けるわけにはいかない。」とし、「我々は、ロシアがユーゴスラビアやイラクあるいはリビアの運命をたどること —— それは世界の労働運動の利益と根本的に対立する —— を防ぐためにできる限りのことを行う」と宣言しています。このような見解は、プーチン政権の階級的性格を無視するか見誤っていると訳者は考えています。何故なら、プーチン政権は勤労人民の権力ではなく支配階級であるオリガーキーの権力であり、ウクライナへの軍事侵攻は、勤労人民の利益のためではなく、オリガーキーの利益の利益のために行われているからです。

 この決議は、先のKKE主導の決議と真っ向から対立しているのですが、ある一点で奇妙な一致を見せています。決議は、「共産主義者の立場は不変である。ファシズムと世界核戦争の脅威に終止符を打つことができるのは、資本主義に終止符を打つことだけである。」と述べています。しかし今私たちに提起されていることは、社会主義革命によって「終止符を打つ」ことではなく、目の前の惨劇と『人類生存の危機』をどう克服するかということです。それは広範な反帝・平和運動を全世界的に巻き起こし、ブルジョア支配階級の最も反動的で好戦的な部分を権力の座から追放することです。KKEもКПРФも「資本主義に終止符を打つ」ことを喫緊の課題であると主張する点で一致しています。これは今日、多くの国において共産党・労働者党が孤立を深めていることと無関係ではないでしょう。今、切実に求められているのは、この現実と真剣に向き合うことです。この決議に署名した党は、以下の通りです。

この決議に署名した党

 

決議『キプロスの平和的再統一は、軍事化と帝国主義の侵略を抑制するための一歩』(訳文)

ーー2022年10月28~29日にハバナで開かれた

第22回共産党・労働者党国際会議の枠組みにおいて——

 キプロス問題は、外国の干渉と帝国主義の侵略の結果である。48 年間、キプロスとその人民であるギリシャ系キプロス人とトルコ系キプロス人は、CIA、NATO、ギリシャ軍事政権によって計画された 1874年のクーデターと、トルコの侵略と継続するトルコによる キプロス領土の37%の占領の諸結果を経験してきた。

 国際関係の軍事化が悪化し、国際法と国連憲章が脇に追いやられている現在の国際的諸条件の下で、キプロス問題の平和的解決は一層の急務となっている。

 現状は静的ではなく、解決策を示すこともできていない。それどころか現状維持と継続する膠着状態は、キプロスに対するトルコの長期的覇権目標とキプロスとその人民の恒久的分裂に貢献している。

 キプロス共和国の排他的経済水域における海洋法に違反したトルコの違法行為、そしてヴァローシャ(注11)における、また国連安全保障理事会決議550号および789号の侵害におけるトルコの違法行為—— これには、戦闘ドローンを含む軍備のさらなる展開による占領地の軍事化の強化を伴う —— は、キプロスの現在と将来にとって重大な懸念の原因となっている。

 2017年7月に中断された実質的対話の再開は、すべてのトルコ占領軍の撤退と保証条約の終了を伴う政治的平等を持つ二地域・二共同体連合の合意に基づいて包括的解決を成し遂げる —— このことは、関連する国連決議によって規定されている —— ための喫緊の課題である。これは、キプロスがトルコによる違法な占領から解放され、国とその国民が再統一するための唯一実行可能な選択肢である。

 政治体制を連邦体制に転換することが、キプロスを再統一する唯一の方法である。我々は、キプロスの単一の主権、単一の国際法人格、単一の市民権に基づくキプロスの真の独立 —— それによって、如何なる第三者も介入できなくなり、国際法およびEUが設立された諸原則に従ってすべてのキプロス人の人権と自由が回復される —— を危険にさらす可能性のある「解決策」を決して受け入れない。

キプロス問題の包括的な解決は、キプロスの非武装化、共通の階級闘争、そして将来の社会主義的変革のために必要な前提条件である。

 共産党・労働者諸党は、この声明に署名する。

 我々は、キプロス問題の包括的解決に向けた実質的な交渉の早期再開を支持し、トルコの違法行為と占領の終結を要求するよう、国際社会に対して呼び掛ける。

 我々は、キプロスの解放と再統一のためのキプロス人民の闘争への連帯と支持を表明する。

〔訳者注〕―――――――――――
(注11)キプロスのファマグスタ南部に位置するゴーストタウン。1974年のトルコのキプロス侵攻以前はファマグスタの観光地であった。紛争が勃発すると住民は他地域へ逃れ、ヴァローシャはトルコ軍の占領下になった。それ以来、ヴァローシャはゴーストタウンのままである。一般に立ち入りは制限されている。〔Wikipediaより〕

http://solidnet.org/article/22nd-IMCWP-Solidarity-Statement-with-the-people-of-Cyprus-The-peaceful-reunification-of-Cyprus-a-step-to-curb-militarisation-and-imperialist-aggressions/ 

この決議についての訳者コメント

 キプロスは、東地中海に浮かぶ面積9,250km2(山形県程度の広さ)の小島で、面積の4割弱を占める北部にはトルコ系の人々が、6割強の南部にはギリシャ系の人々が暮らす人口約124万人の国家です。第2次世界大戦後、ギリシャとトルコの双方が自国領であると主張して対立してきましたが、1960年にイギリスから独立して多民族国家「キプロス共和国」として出発しました。

 しかしギリシャとトルコの支援を受けたそれぞれの民族的グループが衝突を繰り返し、ギリシャ系武装組織が優位を拡大するや、1974年にトルコは軍をキプロス北部に進駐させ、「キプロス・トルコ共和国」として分離独立させました。国連加盟193カ国中192カ国が「キプロス共和国」を国家承認しており、「キプロス・トルコ共和国」を承認しているのはトルコ1カ国に止まります。

 トルコは北キプロスにおける軍事基地を強化し、同地域および近接海域の開発を一方的に進めています。その背景として、キプロスの排他的水域を含む東地中海の海底における石油・ガス資源の豊富な埋蔵が明らかになりつつあること、トルコの帝国主義的発展による海外膨張衝動の高まりがあります。

 決議は、「国際社会に対し、キプロス問題の包括的解決のための実質的な交渉の再開を可能な限り早期に支持し、トルコの違法行為と占領の終結を要求するよう呼びかけるとともに、「キプロス人民の解放と統一のための闘争への連帯と支持」を表明しています。

 この決議には、SolidNetの48の党とその他の4つの党が署名しています。社会主義国の党が署名していないこと、インド共産党(マルクス主義者)やブリティン共産党などが署名していないことが目を引きます。この決議に署名した党は以下の通りです。

■この決議に署名した党

 

決議『ベネズエラの労働運動、ベネズエラ人民、ベネズエラ共産党(PCV)との連帯』(訳文)

 2022年10月27日から29日までキューバのハバナに集まり、第22回共産党・労働者党国際会議 (IMCWP) の枠組みの中で署名した諸共産党・労働者党は、ベネズエラの労働者階級と人民諸階層の生活諸条件に重大な影響を及ぼす米国と欧州帝国主義によって不法に加えられた侵略と制裁に直面しているベネズエラ人民との連帯を表明する。我々は、不法な強制諸措置の即時解除と、帝国主義諸勢力によって奪われてきたベネズエラが所有する資産の返還を繰り返し要求する。

 同様に我々は、ベネズエラの階級意識のある労働運動と労働組合運動 —— それらは、正当な諸要求、即ち基本的食糧パッケージに見合う生活賃金や諸団体協約の再確立の権利、労働組合の団結権とストライキ権、そして労働諸関係の規制緩和と柔軟化の過程に反対する権利のための幅広い統一行動へと動員されつつある —— の諸闘争に対する我々の連帯を表明する。我々は、ベネズエラの労働組合運動の正当な闘争を迫害し、犯罪化しようとするあらゆる試みを非難する。この意味で我々は、自らの諸権利のために闘っているために不当に拘留されたままである労働者たちの即時釈放を繰り返し要求する。

 同様に我々は、米帝国主義から資金提供を受けているといった悪名高い告発や、メディア検閲、議会でのPCV議員による発言権行使の違法な妨害、過去の選挙での立候補の妨害のような、ベネズエラ共産党(PCV)に対して向けられてきた誹謗中傷と攻撃の組織的なキャンペーンに対する懸念を表明する。

 我々は、ベネズエラ国家と政府のさまざまな権力機関に対して、PCVに対する攻撃を停止すること、同様にPCVの非合法化と政治活動の禁止を正当化することを目的としたシナリオの作成を押し進める試みを停止することを強く求める。ベネズエラ共産党(PCV)とベネズエラの労働者階級の政治的および民主的権利の完全な行使が保証されなければならない。

http://solidnet.org/article/22nd-IMCWP-Solidarity-with-the-workers-movement-people-of-Venezuela-and-the-PCV/

この決議についての訳者コメント

 声明は、「ベネズエラの労働者階級と人民諸階層の生活諸条件に重大な影響を及ぼす米国と欧州帝国主義によって不法に加えられた侵略と制裁に直面しているベネズエラ人民との連帯を表明する。我々は、不法な強制諸措置の即時解除と、帝国主義諸勢力によって奪われてきたベネズエラが所有する資産の返還を繰り返し要求する。」と述べ、ベネズエラに露骨極まりない干渉とベネズエラ資産を強奪している西側帝国主義を糾弾し、ベネズエラ人民への連帯を表明しています。

 声明は同時に、ベネズエラ政府や支配政党である社会主義統一党によるベネズエラ共産党(PCV)と左派労働運動への弾圧に抗議し、「ベネズエラの労働組合運動の正当な闘争を迫害し、犯罪化しようとするあらゆる試みを非難する。この意味で我々は、自らの諸権利のために闘っているために不当に拘留されたままである労働者たちの即時釈放を繰り返し要求する」「ベネズエラ国家と政府のさまざまな権力機関に対して、PCVに対する攻撃を停止すること、同様にPCVの非合法化と政治活動の禁止を正当化することを目的としたシナリオの作成を押し進める試みを停止することを強く求める。」と述べています。

 ここには、ベネズエラにおける複雑で困難な状況が表出しています。ベネズエラ政府や社会主義統一党側からすれば、「一部の労働組合の要求と闘争は極左的で無政府主義的であり、国の統一を破壊する危険なものであり放置できない。」となり、PCVや左派労働組合の側からすれば、「政府と支配政党の政策は、『国の統一』の名の下にブルジョアジーの利益を労働者階級の利益に優先させており、行政機関の腐敗・不正は深刻であり放置できない。従ってそれらの誤りについて反対して闘うことは労働者・人民の権利であり義務である。」となります。

 この問題は人民内部の矛盾であり、社民主義政党と共産党の統一戦線の問題であり、人民民主主義から社会主義への移行の問題であり、労働運動と人民運動の歴史においてしばしば現れた問題です。この人民内部の矛盾を解決できずに統一戦線が崩壊してしまうならば、反帝・反寡頭制の人民民主主義政権は崩壊するか変質してしまいます。訳者は、社民政党と共産党が対話を通じて合意形成を図り、ベネズエラ人民が首尾よく困難を克服し、社会主義志向国家から社会主義国家への前進を勝ち取ることを願いつつ、情勢を注意深く見守りたいと思っています。

 この声明にはSolidNetの50の党と1つのその他の党が署名しています。社会主義国の党は署名していません。ウクライナ問題では立場を著しく異にするギリシャ共産党とロシア連邦共産党が揃って署名していること、インド共産党(マルクス主義者)は署名しているが、ブラジル共産党(PCdoB)は署名していない〔もう一つのブラジル共産党(PCB)は署名している〕こと、ドイツ共産党やブリティン共産党は署名しているがポルトガル共産党やスペイン共産党は署名していないことなどが目を引きます。この決議に署名した党は以下の通りです。

この決議に署名した党

 

【訳者後書き】

 今回の第22回共産党・労働党国際会議(IMCWP)の『最終宣言』、『行動計画』、5つの『連帯決議』をざっと読んで、今日の国際共産主義運動の混乱と困難を改めて痛感させられました。国際情勢はウクライナ戦争の勃発によっdとロシア連邦共産党(КПРФ)のいずれもがマルクス・レーニン主義に立脚しているとするなら、マルクス・レーニン主義は異様に多義的な学説であることになり、イデオロギーとしての権威を失墜しかねません。

 また、『最終宣言』には朝鮮労働党も署名していますが、朝鮮労働党のイデオロギーをマルクス・レーニン主義に立脚したものとするなら、それはマルクス・レーニン主義に対する不信を増大させることにしかならないでしょう。

 既に述べたように、前世紀半ばに高らかに宣言された『81カ国共産党・労働者党の声明』は、国際共産主義運動の『総路線』として、我々の活動の根本に置かれてきました。しかしその当時のソ連邦共産党と中国共産党のイデオロギー対立は、今日のKKEとКПРФとの対立よりも深刻でした。それはやがて両国の軍事的衝突(1969年)にまで至りました。そのような中にあっても『81声明』は積極的役割を果たしたと言えますが、中ソ両国の軍事衝突はマルクス・レーニン主義と社会主義の権威を著しく傷つけました。従って『81声明』の歴史的意義とその限界についても、今一度立ち入った考察が必要とされています。

 国際共産主義運動の危機と困難は、多くの諸国において共産党・労働者党の影響力が後退しつつあることとにも現れています。とりわけ若い世代における影響力の後退は深刻です。このことは全世界的な傾向です。従って、『行動綱領』は、「若者の積極的な政治参加を促し、我々が擁護する諸理念と諸原則の継続性を確保すること。」「国際共産主義運動と国際労働運動の歴史的記憶を保存し、新しい世代に伝えること。」を改めて強調しています。

 このような国際共産主義運動の諸困難を目撃して、ブルジョア階級や小ブルジョア階級のイデオローグたちは、「マルクス・レーニン主義と共産主義は終わった」と声高に叫び、労働者階級の誠実な活動家やイデオローグたち、また良心的な民主主義者たちまでもが、「レーニン主義を否定するマルクス主義」を主張したり、マルクス主義を社会民主主義的に再解釈したり、あるいはまたマルクス・レーニン主義に無関心な態度をとっています。そのことの責任の一端は、国際共産主義運動自身にあります。

 この困難から目を背けることなく全力で立ち向かうこと、マルクス・レーニン主義の理論的混乱を克服すること、それ無しに時を過ごすなら、マルクス・レーニン主義から遠ざかり、良くて社会民主主義に移行せざるを得ません。私たちは如何に困難であれ、時に絶望的であれ、弁証法的唯物論の世界観と科学的思想であるマルクス・レーニン主義の諸原則に依拠し、それを発展させなければなりません。現実を分析し、社会主義への道筋を明らかにしなければならなりません。訳者は、そのための半歩前進を目指して歩み続けたいと思います。

〔終り〕

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