コロナ事態に対する85の共産党・労働者党の声明

 新型コロナウイルス(Covod-19)のパンデミックは、”人類の生存”という喫緊かつ最重要の人類的課題を提起し、その速やかな解決を要求しているが、その被害は決して万人に”平等”に及んでいるわけではない。その被害は、何よりも貧しい人々、被搾取階級の人々に集中しており、富める人々はここに至ってもなお、”資本の利益”を最優先させ、コロナ対策という名の国家財政の分捕り合戦に余念がない。

 世界の85の共産党・労働者党は、この危機的事態の中で、勤労人民の命と生活を守るための緊急対策を作成し、共同声明という形でそれを公表した。以下はその全文である。原文は、ギリシャ共産党(KKE)のWEBページに掲載されたテキストによる。従って、それにはKKEの前文が付いている。訳は、露語版を底本とし、英語版を参照した。

                                  川 下 了

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数十の共産党・労働者党が、諸国人民の健康と諸権利を守るための緊急対策を要求する

 全世界の85の共産党・労働者党が、新型コロナウイルスのパンデミックによって引き起こされた世界の状況に関する共同声明に署名をした。ギリシャ共産党のイニシアチブによる共同声明において、諸共産党は、第一に、医師たち、看護師たち、ならびにこの病気に感染した人々に対する支援を表明する。第二に、独占諸グループの収益率を支えるために、巨大資本に奉仕する諸政府によって実行された保健の商業化・民営化に基づいた反人民的政策の結果である公衆衛生制度の重大な欠陥を糾弾する。
 諸共産党・労働者党は、この状況が資本主義の反社会的本性を示しているだけでなく、社会主義社会の切実性と優位性をも示しているということを強調する。諸共産党・労働者党は、公衆衛生制度を支えて強化することにより、この伝染病と闘うために必要なすべての手段を講じることを要求する。
 以下は、共同声明全文と諸党の署名である。
 
諸共産党・労働者党の諸国人民の健康と働く者の諸権利を守るための緊急対策
 われわれ共産党・労働者党は、いたる所で、わが諸国人民に対する責任感を持ち、労働者階級と人民諸階層の健康と諸権利を守るための速やかな対策を講じさせる闘争の最前線に立つことを宣言する!
 われわれは、この大問題と格闘している医師たち、看護師たち、病院スタッフたち、医療諸機関に対して、心から感謝の意を表明する。
 われわれは、CoVID-19のパンデミックに苦しんでいる人々との連帯を表明し、この病気からの一刻も早い回復を願っている。
 われわれは、防御諸手段の提供と医療専門家の派遣といったコロナウイルス被害が最も大きい国々との連帯行動を繰り広げている中国やキューバやロシアのような国々を歓迎する。それらの国々の行動は、EUの無為無策を埋め合わせている。
 CoVID-19パンデミックの危険性は、すべての資本主義国における医療制度の悲劇的で深刻な欠陥を見せつけているが、これらの欠陥は、コロナウイルスの出現以前から知られていた。これらの欠陥は、偶然に発生したのではなく、独占諸団体の収益性を支えるために、巨大資本に奉仕する諸政府によって実行された医療制度の商業化・民営化に基づいた反人民的政策の結果である。この政策は、予防とケアにおいて人民のあらゆるニーズをカバーするために今日利用し得る膨大な科学・技術的潜在力を無に帰している。
今日の経験は、資本主義の反社会的・寄生的本性を暴き出し、社会主義と集中した科学的計画の優位性と切実性を示している。それらの基準になるのは人民の諸要求であり、社会主義は一次医療(注1)、予防、病院、医師や看護スタッフ、薬局、研究諸機関、検査諸機関、そして保健分野における通常医療と救急医療に対する人民のすべての必要を保障することができる。
 以前から存在していた世界経済成長の減速が、コロナウイルスの蔓延により今日も続いており、このことが、来る時期における新たな危機の出現リスクを増大させている。巨大資本に奉仕する諸政府による一致団結の呼掛けにもかかわらず、彼らは独占諸団体に財政支援を行い、危機の負担をまたしても労働者や他の人民諸階層に負わせようとしている。働く者、人民は、これ以上支払うことはできないし、支払うべきでない。
 国と政府の責任を隠蔽するための口実に、『個人責任論』を利用することはできない。今日の必要な諸措置をとらせるには、資本主義的利益の祭壇に諸国人民の必要と健康を奉げる独占諸グループを支援する政策に対する人民の闘争が必要である。
諸共産党・労働者党は、以下のことを含めて、伝染病と闘うための必要なすべての措置を速やかに実施することを要求する。
 
(注1) ロシアを含む西欧諸国では、医療は、外来を担当する診療所と入院を担当する病院に区分されている。露語版では診療所を指す「一次医療」という単語が使われているが、英語版では「プライマリー・ヘルスケア」が使われている。
 
  •  公衆衛生制度への即刻の国家資金の投入。完全なワンセットの諸権利を持つ医師と看護スタッフの常勤採用。救急蘇生部門と集中治療室(ICU)のすべてのニーズのカバー。公衆衛生サービスと科学研究の十全な機能に必要なインフラの確保。
  • 予防と保護に必要なすべての手段(マスク、手袋、防腐剤など)の国家による住民への即刻の無料給付。投機との闘争。病院でコロナウイルスと闘うことにより、自分の生命と健康にリスクを負うすべての医療スタッフのために、保護諸手段の即刻の提供。
  • 働く者の収入と諸権利の保護。 CoVID-19の流行を口実にして大量解雇を行い、賃金、労働時間、休暇、その他働く者の諸権利の侵害を試みている資本の専横を阻止すること。労働現場で働く者を保護するための緊急対策を講じること。
  • コロナウイルスを口実にした人民の民主的諸権利の制限にノー。
  • この状況下で、より一層不公平で犯罪的になり、対象国の人民の生活を困難にする制裁と経済封鎖のすべての措置を撤廃すること。諸国人民の健康と生活を守るために必要なすべての対策を講じること。
  • われわれは、帝国主義的介入や軍事演習 ―― 例えばNATOが行っているような ―― に「ノー」と言い、国家資源が諸国人民のニーズに、即ち保健制度と社会保障制度に振り向けられるよう要求する。
1.アルバニア共産党
2.アルゼンチン共産党
3.アルメニア共産党
4.オーストラリア共産党
5.オーストリア労働党
6.アゼルバイジャン共産党
7.バングラデシュ共産党
8.ベルギー共産党
9.ブラジル共産党
10.イギリス共産党
11.イギリス新共産党
12.ブルガリア共産党
13.ブルガリア共産主義者連合
14.カナダ共産党
15.チリ共産党
16.クロアチア社会主義労働者党
17.キューバ共産党
18.AKEL(注2)キプロス
19.ボヘミア・モラビア(注3)共産党
20.デンマークにおける共産党
21.デンマークの共産党
22.エジプト共産党
23.エルサルバドル共産党
24.フィンランド共産党
25.フランス共産主義革命党
26.フランスにおける共産主義再生の柱
27ジョージア統一共産党
28.ドイツ共産党
29.ギリシャ共産党
30.ハンガリー労働者党
31.インド共産党
32.インド共産党(マルクス主義)
33イラン・トゥデー党
34.アイルランド労働者党
35.アイルランド共産党
36.イスラエル共産党
37.イタリア共産党
38.共産党(イタリア)
39ヨルダン共産党
40カザフスタン社会主義運動
41.朝鮮労働党
42.キルギスタン共産党
43.ラトビア社会党
44.社会党(リトアニア)
45.ルクセンブルク共産党
46.マルタ共産党
47.メキシコ共産党
48.人民社会党=全国政治連合、メキシコ
49.ネパール共産党
50.マケドニア共産党(注4)
51.ノルウェー共産党
52.オランダ新共産党
53.パキスタン共産党
54.パレスチナ人民党
55.パレスチナ共産党
56.パラグアイ共産党
57.ペルー共産党
58.ポーランド共産党
59.ポルトガル共産党
60.フィリピン共産党[PKP 1930] (注5)
61.プエルトリコ共産党
62.ルーマニア社会党
63.ロシア連邦共産党
64.ロシア共産主義労働者党
65.ソビエト同盟共産党
66.ユーゴスラビア新共産党
67.セルビアの共産主義者
68.スロバキア共産党
69.南アフリカ共産党
70.スペイン共産党
71.スペイン労働者共産党
72.カタロニアの共産主義者
73.ガリシア人民連合(注6)
74.スリランカ共産党
75.スワジランド共産党
76.スウェーデン共産党
77.スーダン共産党
78.シリア共産党
79.シリア共産党・統一
80.共産党、スイス
81.トルコ共産党
82.ウクライナ共産党
83.ウクライナ共産主義者連合
84.アメリカ共産党
85.ベネズエラ共産党
 
2/4/2020
 
(注2) AKELはギリシャ語のΑνορθωτικό Κόμμα Εργαζόμενου Λαούn(勤労人民改革党)の頭文字を英語表記したもの。キプロスのギリシャ系住民の中で影響力を持つ。KKEの兄弟党。
(注3) ボヘミア・モラビア共産党は、チェコ共和国の共産主義政党である。ボヘミア(独語:ベーメン)はチェコの東西部に位置する。モラビア(独語:メーレン)は、チェコの東部に位置する。ボヘミアとモラビアを合わせると、チェコの大半を占める。残りはシレジア地方である。ナチスによるボヘミア・モラビア編入とそれに対する闘争の歴史から、チェコという名称よりボヘミア・モラビアという名称を用いているようだ。
(注4) マケドニア共産党は、ユーゴスラビア共産主義者同盟の流れを汲み、現在の北マケドニア(KKEはこの国名の使用に反対をした)の政党である。
(注5) フィリピン共産党[PKP 1930]は、1930年に結成された古い歴史を持つ。戦後もソ連派と呼ばれる立場であり、60年代以降は武装闘争路線を放棄したが、1968年には毛沢東派が分離して武装闘争を続行した。
(注6) ガリシア人民連合は、イベリア半島北西角に位置するスペインの自治州であるガリシアの地域政党である。