フェミニズムと戦争協力 —— 見えなかった過去から学び、未来をつくるために

大阪唯物論研究会 会員 倉島伝治

 鈴木裕子 著
 梨の木舎 発行
 2026年6月25日 刊
 293頁
 ¥2,970円

 本書は「フェミニズムと戦争 婦人運動家の戦争協力」(1986年 マルジュ社)、「同名(増補版)」(1997年マルジュ社)の「改題増補版」である。

 戦前の女性運動家、女性指導者(高良とみ、羽仁説子、市川房枝、山高しげり、奥むめお)の戦争責任に対する告発の書であるが、今回の改題増補版刊行に寄せる著者の意図は以下の抜粋から読み取ることができる。

 「高市政権は、スパイ防止法の制定を目指し、そのうえ侵略の旗であった「日の丸」を国旗損壊罪の対象として制定しようとするなど、まるで国家に反逆する者の犯罪化を図っているようである。明らかな戦前回帰で、軍国日本に戻りかねないものといえよう。軍国日本とフェミニズムの関係を検証する本書が、今の状況を切り拓く一端になれば望外の喜びである。

 本書では、かつて女性として市民的自由・権利を求めていた女性運動家・女性指導者たちが十五年戦争・アジア太平洋戦争に際し、いかなる姿勢、活動を行ったかを省察した。それは、それまでの民主的な近現代史女性史研究が蔑ろにしてきた範疇で、いわばタブーの領域とされてきた。わたくしは「告発史観」「反省史観」であるという批判を受けた。鈴木が戦前のフェミニストたちを批判するとき「不当な断罪」だと断じられた。

 本書で省察するのは、もっぱら加害者性 —— それも女性の —— というものをみようとするのである。対象も婦人運動家や、革新的な婦人指導者といわれてきた人たちの戦争協力」に限られている。もとより、わたくしはこの本を彼女らに対する「告発」の書のつもりで書いたのではない。わたくしの真意は、戦争に協力た婦人運動、フェミニズムというものは、どんな意図をその底にひそめていようとも、やはり間違っていたということを確認したかったことと、その誤った道を婦人運動家・指導者たちが選択していったのはなぜなのか、ということの検討を通して、今日のわたくしたち女性指導者一人ひとりの生き方と、フェミニズム運動に対する教訓と反省の一素材になればと思ったからである。」

 戦前のことを取り扱っているが、著者の言うように今日的課題であるのでぜひとも一読を。蛇足ながら、著者を「告発史観」と批判する者たちのなかに「上野千鶴子」が含まれている。